2022年1月26日水曜日

指先が痛くなるほどでしたが

自転車で公園に向かうと手袋をしていても指先が痛くなるほどでした。
それでも青空が広がっていて歩いているうちに日差しで体が温まりました。

福井 大野で「霧氷」-8.8度 この冬一番の冷え込み〟(NHK 1月25日)
これも昨日のニュースで和名も学名も面白いなぁ(^^♪

「オシリカジリムシ」と命名 新種の甲殻類 出水の干潟で発見〟(鹿児島NHK 1月25日)
学名は、発見場所の不知火海と足の形から、
ギリシャ語でダンサーを意味する「コレフトリア・シラヌイ」と学名を付けました。

先日、父への確定申告の用紙が届かないので税務署に電話をしました。
今まで苦労して申告していたのですが
父も私も公的年金が、400万以下は申告する必要がなかったことを初めて知りました( ゚Д゚)
手引きに書かれているのに、申告の手順ばかりを読んでいて、
納税は国民の義務と毎年、苦労して作製していたのだけど…
去年、父は1000円ほど納付したのに必要がなかった…

公的年金等を受給されている方へ」(国税庁)

ユリイカ2008年10月臨時増刊号 総特集=杉浦日向子」(青土社 2008年)より 
スズメが好きだった日向子さん  林丈二」を転記します( ..)φ
この臨時増刊号は、今も購入できるようです。
 スズメが好きだった日向子さん  林丈二

 日向子さんは可愛い人だった。
また、子供っぽいというか、素顔は弱虫なところもあった。
 路上観察の皆で上海に行ったときも、「飛行機は苦手なんです」と言っていたとおり、乗り込む前からそわそわ、あの心配顔と落着きの無さは普通ではなかった。
いざ離陸が始まると、目をかたくぶつって、座席のひじ掛けを力いっぱい握りしめていたあの姿は、講演会やテレビの前で落ち着き払って話している日向子さんからはなかなか想像できない。 
(『ユリイカ2008年10月臨時増刊号 総特集=杉浦日向子』青土社 2008年)
 あとで聞けば「テレビに出たあとはエネルギーを使い果たしてぐったりです」と言っていたが、飛行機に乗ったあとも、そうとうぐったりしていた。
たしかに体力はあまりなかった。
 それは、彼女の偏食が関係していたと思う。
肉はだめで、カツ丼などは食べたことがないという。
食べるといえば、蕎麦とクリームパン。
 そんな彼女が「路上観察会」の合宿の時、晩の食卓にシマダイの活き造りが出た。
これは彼女にとっては事件である。
とたんに逃げ腰になった。
「姿のあるものは苦手なんです」と言って、魚がペチャッと動くたびに座布団から身体を浮かせる。
「目がずっとこっちを見てる」と言っておびえるので、南伸坊さんに「もう魚の方を見なければいいじゃない」と言われていたぐらいだ。
   *

 日向子さんは、どこかのお城のお姫様というようなイメージがある。
お城の中で育って、想像力ばかりが先行して、ナマには弱い。
確かにそういう面もあると思うが、無類の銭湯好きで、近所の銭湯をかたっぱしからまわって、楽しんでいた。
これはもう、江戸の下町のちゃきちゃき娘そのもの。
江戸の将軍が、変身して江戸の町で活躍するという、その女性版のようでもある。
 何がきっかけだったのか、シマダイ事件の時、「わたし、お酒を飲めるようになりました」と言って、その時はもっぱらお酒とワインを飲んでいた。
酒と蕎麦と銭湯、これはお姫様の趣味ではない。
 茶目っ気もある。しかも、知的な。
 やはり、これも、シマダイの日。
話題が塀の上の忍び返しには何がいいかということになって、いろいろ出つくして、誰かが「うんこ」がいいと言ったところ、日向子さんは、生は問題があるから「それなら、備前焼がいいですね」と言った。
これはもちろん大受け。
こういう落ちは日向子さんならではで、日向子マンガの一場面を見ているようであった。
  *

 日向子さんのマンガで僕が好きなのは、細かい部分を愛らしく表現すること。
「神は細部に宿り賜う」という言葉があるが、細かいところにも、日向子さんが宿っているという感じである。
 ただ男と女がすれちがうだけでの場面でも、女のかんざしの先で小さな千鳥の飾りが揺れている。
 風で「ザザザ」と吹き寄せられる落ち葉に虫食いがあったりする。
 大きく広い空の家並みの近くで、豆粒ほどの字で「チュン」「チュン」「チュン」とスズメの鳴き声が散らばっている。
 スズメはよく登場する。
日向子さんはスズメが大好きだった。
僕もどこか、日向子さんがスズメ的なところがあるなと思っていた。
あの福々として、チュンチュンとはねている感じ。
 セリフも時々、手書きになっている。
上手という字ではない。
いわば日向子文字である。
これが使われている時は、その絵の登場人物が男であっても、女であっても、描き手の日向子さんがどうしてもダブってくる。
 だから、日向子さんに会いたければ、日向子さんの描いたマンガを開けば、いつでも会うことができるというわけだ。
  *

 日向子さんは、よく豊島園遊園地のウォータースライダーを楽しみに行ったと聞いた。
プラスチックのトンネルの中を水が流れていて、ワーッといいながら滑り下る遊戯施設である。
あれは、弱虫ではできない。
しかし、飛行機が苦手で、シマダイがはねるのにおびえた日向子さんが、あれは大好きだったという。
何でも、お母さんがああいうのが大好きで、その血を引いているのだそうだ。
 泳ぎはできるの?と訊いたら、「平泳ぎはできる」と答えた。
得意かどうかは訊きそびれたが、水は大丈夫なのである。
 飛行機はだめでも、船に乗るのは大好きで、大きな船に乗って外国に何度も行っている。
海がシケて船室の窓から大波が見えて、ぐちゃんぐちゃん揺れるのが痛快だと言っていた。
確かに豊島園のウォータースライダーも、そういう痛快さがあるだろうから、納得がいく。
 大きな船が好きだというのも納得がいく。
相撲では大乃国が大好きだった。
理由は「とにかく大きな人が好き」なんだそうだ。
大乃国が引退して髷を落としたとき、彼女は髪をカットしに行っている。
それぐらいの入れ込みようであった。
 日向子さんは、亡くなるほんの少し前に、外国に行っている。
知人も友人もいっしょではなかった。
一人で大きな船に乗って、大きな海の上をゆられていく航海。
小さなスズメが一羽、大きな海に出ていったようなものだ。
強い人だったんだなあ。
  (はやし じょうじ・イラストレーター)
(『ユリイカ2008年10月臨時増刊号 総特集=杉浦日向子』青土社 2008年)