2016年11月30日水曜日

しだいに雲が広がって

メジロが来ているのは
 枇杷の花鳥もすさめず日くれたり

すさめず―賞美せぬ。
(『蕪村俳句集』)
蕪村は好きな俳人ですが,この句だけは異議を申し上げます(^^ )
メジロは賞美でなく賞味していますが(^^ )
あはれにも瘠せし木の葉のかたはらへ濡れて桜の葉の落ちにけり
(『与謝野晶子歌集』)
公園に来た時は,青空が広がっていて
日ざしが暖かく両親も喜んでいました(o^^o)
一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております   山崎方代

方代さんの歌の素晴らしさを知ったのは俵万智さんの著書おかげです。

(長くなるので省略しながら紹介します)
生涯独身で,定職を持つことをせず,小屋のようなところに住んでいた不思議な人。
(略)
生きた会話の言葉がそのまま三十一文字に宿ったようなこの歌は,
「万智さんねえ,あなた,私と恋とは無縁の人間と思っているようだけれど……」と,
方代さんが語りかけてくれたようにも思われた。

(略)
一番大切なことは,これ以上言葉にはしませんよ,それでいいじゃあないですか,と方代さんは言う。
 南天の実はその恋の舞台を彩っていたのだろうか。
南天の実が知っているという表現は,裏返せば,誰も知らないということである。
(略)
人生の夕暮れどきにあって,振り返りこんなふうに優しく思い出される恋。
「一度だけ」なんて作者は謙遜しているけれど,そこには静かな満足感が漂っている。
たぶん,方代さんは言いたいのだろう。
生涯をとおして「本当の」と断言できる恋が一つあれば,充分じゃないですか,と。

(『あなたと読む恋の歌 百首』)
わたしの石蕗の花雨がふる日はぬれて
(『山頭火大全』 講談社 1991年)
山家集 下 雑 1082
  秋,遠く修行し侍りけるに,ほど経(へ)ける所より,
  侍従大納言成通の許(もと)へ申し送りける

あらし吹く 峯の木(こ)の葉に ともなひて いづち浮かるる 心なるらん

峯の嵐に吹き散らされる木の葉とともに,遠くまで吹き散らされ,落ちつくこともなくどこを浮かれ歩く心でしょうか。

◇侍従大納言成通(なりみち) 管絃・蹴鞠(けまり)の名手。
侍従大納言であったのは,久安5年(1149)7月28日から保元元年(1156)9月17日まで。
平治元年(1159)10月15日出家,法名栖蓮,63歳(当時西行は42歳)。
◇いづち浮かるる あてどなく修行のためさすらうことをいう。世の常の「浮かるる」ではない。
(『山家集』)
山家集 下 雑 1083
   返し
なんとなく 落つる木の葉も 吹く風に 散りゆく方は 知られやはせぬ

何となく吹く風に落ちる木の葉も,どこへ散りゆくのか知られないことがありましょうか。
あなたが行かれる先は,名のごとく極楽浄土のある西の方でしょうよ。

西行の願う行先は西方浄土であろうに,「いづち浮かるる」とは,と返した歌。
(『山家集』)
美しき銀杏落葉を仰ぐのみ  星野立子
(『講談社版 カラー図説日本大歳時記[座右版]』 昭和58年)
ちっちゃな口で
害虫を退治したp(^-^)q


山雀の芸で温泉地を巡り  松沢鶴水
(『川柳歳時記』奥田白虎編 創元社 昭和58年)
しだいに薄い雲が覆い始めました。
明日は雨の予報です…

巻層雲。
イギリスの古いことわざに,「空にペンキ塗りの刷毛が描かれたら,じきに嵐が到来する」という。
(『ヤマケイポケットガイド(25)雲・空』田中達也/山と渓谷社 2001年)

2016年11月29日火曜日

晴れ間と曇り空がくるくると…

日射しがあって,少し残っていたハナミズキの実が光っていました(o^^o)
雀らよ小便無用古衾(ふるぶすま)

[訳]雀たちよ小便しちゃいけないよ。この古衾に。
[解]古衾は,古びた寝具。それをいいことに雀たちが,小便する。
黴(かび)臭い匂いもする。
日常のありふれた風景をユーモラスに見て,雀たちに呼びかけた。
(『一茶句集 現代語訳付き』)
山家集 上 秋 488
   暮秋(ぼしう)
暮れはつる 秋の形見に しばし見ん 紅葉散らすな 木枯の風

今日で終わりとなってしまう秋の形見として,しばらく紅葉を見ていたいから,
木枯の風よ,紅葉を散らさないでおくれ。
(『山家集』)
ヒドリガモ L48.5cm
中形のカモで嘴は短く,くびも短い。
水上では体を高く保っている。
雄の額から頭頂は黄白色で,頭部からくびは茶褐色,
目の後方に緑色光沢を持つ個体もいる。
胸はぶどう褐色で,体の他の部分は灰色,下尾筒は黒い。
雨覆は白くて飛翔中に目立つ。嘴は鉛色。
雌は褐色で他の種の雌より褐色味が強く,腹部は白い。
飛鳥中,雨覆は灰褐色で,大雨覆の先は白く,白い線となる。
雄の若鳥は雨覆が白くなく,飛翔中のパターンは雌に似る。
また,エクリプスの雄は雌に似ているが,雨覆は白い。
声:ピューンという口笛のような比較的大きな声で鳴く。
習性:冬鳥として湖・川・内湾などに渡来。
他のカモ類より陸に上がって草を食べることが多い。

(『フィールドガイド 日本の野鳥』)
あしひきのやまのたをりのもみぢばをたをりてぞこしあめのはれまに   良寛

○やまのたをり―「たをり」は山の頂の撓んだところ。「たわ」とか「たを」ともいう。
▽あなたのために山の鞍部で紅葉を手折って来た。
雨の晴間をみはからって。
(『近世和歌集 日本古典文学大系93』
    高木市之助・久松潜一校注/岩波書店 昭和41年)
小首をかしげて( ^-^)
枯蔓をもがき抜けたる鶲かな  水原秋櫻子
(『講談社版 カラー図説日本大歳時記[座右版]』 昭和58年)
老いの名のありとも知らで四十雀  芭蕉
(『図説俳句大歳時記 秋』 角川書店 昭和39年)
木々を見ているとこんな場面に出会うことがあります
どれくらいの確率でこのように器用に
穴にうまくはまるのかなと不思議です(゜∀゜)
巻第四 秋歌上 243
  寛平御時后宮の歌合の歌      在原棟梁(むねやな)
秋の野の草のたもとか花すすきほに出でて招く袖と見ゆらむ

秋の野の草の袂なのか,花薄は。
それで穂が出ると袖が招いていると見えるのだろう。
○初二句 「秋の野の草」を着物に見立てて,薄をその袂に見立てる。
○招く 薄の穂が風に揺れるさま。その様子を手招きするものと見なす。
(『新版 古今和歌集』)
飛んでいく…
ちょっと先で止まってくれたヽ(^。^)丿

 夏の花だと思っていたら…

カンナ炎天病ひならざる一日の寐
(『しづ子』)
こちらは穴が大きいから確率が高いかな(^^ )

2016年11月28日月曜日

あやしい天気でしたが…

花枇杷や無き父なれば死せりと應ふ
(『しづ子』)
山家集 下 雑 1123
   返し   大宮の女房加賀
君をおきて 立ち出づる空の 露けさに 秋さへ暮るる 旅の悲しさ

あなたを後に残し,都へと出発しますその空も時雨がちで,わたくしも涙がちとなり,
その上秋までも終わろうとしている旅立ちは悲しいことです。
大宮の女房加賀 「大宮」は二代(近衛・二条両天皇)の后であった太皇太后多子。
「加賀」は花園左大臣有仁の恋人でその歌により「伏柴の加賀」と称され,
待賢門院(璋子)加賀と同一人説もある。
◇君をおきて 「おき」は「露」の縁語。
◇露けさ 時雨がちであることと,涙がちであることをいう。
(『山家集』)
(「梢の巣にて」より)
   断章17  
草木をわたる秋風と
わたりどりの翼の陰影(かげ)と
わたしの溜息
そしてもろこしばたけでは
もろこしが穂首を低く垂れてゐる
その穂首からは
黄金色の大粒な日光の
なみだのやうなしづくが
ぽたりぽたりと地に落ちてゐる
ぽたりぽたりと……

(『山村暮鳥全詩集』 彌生書房 昭和39年)

良寛の手毬の如く鶲来し  川端茅舍
(『講談社版 カラー図説日本大歳時記[座右版]』 昭和58年)
私の無き空にすら全(また)くよき日は乏(とぼし)きを人はいはんや   橘曙覧覽

○私の無き空―私心というものがない空。
○乏きを―少ないのに。
○人はいはんや―人においてまして。
▽私心というものがない空にさえ全くよい日は少ないのに,
まして人においては無欠なものはないのである。
(『日本古典文学大系93 近世和歌集』
   高木市之助 久松潜一校注 岩波書店 1966年)
鶺鴒の吹別れても遠からず  阿波野青畝
(『図説俳句大歳時記 秋』 角川書店 昭和39年)
つややけきつはの葉の上にかすかなる日の影しみて冬ならむとす  松村英一
(『植物歳時記』)

あきかぜはもみぢをあだにおもへばやまきのとさへふきあてにかり   良寛

○あだ―自分を害するもの。敵。
○まきのと―杉戸。この下「に」脱か。
▽秋風は紅葉をかたきとでも思っているのであろうか,
ただ吹き散らすばかりでなく,杉戸にまで吹きあててしまった。
(『近世和歌集 日本古典文学大系93』
    高木市之助・久松潜一校注/岩波書店 昭和41年)

水鳥よぷいぷい何が気ニ入らぬ  

(『古典俳文学大系15 一茶集』
丸山一彦 小林計一郎校注者 集英社 昭和45年)
(ぷい「ぷい」はくの字点)
(ひひらぎ)の花一本の香(かをり)かな   高野素十
(『日本の詩歌30』)
(かげ)りあふを避けあふ友ら秋桜  香西照雄
(『講談社版 カラー図説日本大歳時記[座右版]』 昭和58年)