2019年8月4日日曜日

連日暑いですが…

今日は日曜日だけどいつもと比べて来園者が少ないなと感じました。
朝から気温がグングン上がっているからかな?
という僕も歩くのは午前中の1時間ほどにしています。
今まで、午後から図書室に資料調べ行っていましたが
午後から出かけるのは控えています。
(そのためにブログの更新が早い(^_-)…)
今の世の中、豊臣秀吉のような政治家ばかりだと思ってしまうけど
民間には雨森芳洲(あめのもり ほうしゅう)が築いた外交関係を受け継いでいる人たちがいる。

 “朝鮮通信使行列 日韓300人参加へ「民間交流は続ける」長崎
雨森芳洲については、
国境の島の国際交流 日本と韓国をつなぐ架け橋 対馬」(動画)
地元の高校生の言葉に
「ニュースを見てて 関係が悪いとずっと思ってた 
 若い世代は 仲良く出来るんじゃないかな」

なお朝鮮通信使について2018年11月4日の記事
京都の歴史を歩く』(岩波新書)より転記していますので参照してください。
森達也(映画監督・作家)さんのTwitter

あるいはトゥール・スレン虐殺犯罪博物館など、
世界の主要な展示施設のほとんどは国立だ。
人は条件さえ整えばけだものにもなるし紳士淑女にもなる。
大切なことは負の歴史を見つめる勇気と理性を持つこと。
それが歴史を学ぶ意義。
この国はまだそのレベルではない。
むしろ退行している。


セロ弾きのゴーシュ」の続きを転記しますφ(..)
 次の晩もゴーシュがまた黒いセロの包みをかついで帰ってきました。
そして水をごくごくのむとそっくりゆうべのとおりぐんぐんセロを弾きはじめました。
十二時は間もなく過ぎ一時もすぎ二時もすぎてもゴーシュはまだやめませんでした。
それからもう何時だかもわからず弾いているかもわからずごうごうとやっていますと誰(たれ)か屋根裏をこっこっと叩くものがあります。
「猫、まだこりないのか。」
(『新編 銀河鉄道の夜』宮沢賢治 新潮文庫 平成元年)
 ゴーシュが叫びますといきなり天井(てんじょう)の穴からぼろんと音がして一疋(ぴき)の灰いろの鳥が降りて来ました。
床へとまったのを見るとそれはかっこうでした。
「鳥まで来るなんて。何の用だ。」ゴーシュが云いました。
「音楽を教わりたいのです。」
 かっこう鳥はすまして云いました。
 ゴーシュは笑って
「音楽だと。おまえの歌は かっこう、かっこうというだけじゃあないか。」

 するとかっこうが大へんまじめに
「ええ、それなんです。けれどもむずかしいですからねえ。」と云いました。
「むずかしいもんか。おまえたちのたくさん啼(な)くのがひどいだけで、なきようは何でもないじゃないか。」
「ところがそれがひどいんです。たとえばかっこうとなくのとかっこうとうこうなくのとでは聞いていてもよほどちがうでしょう。」
「ちがわないね。」
「ではあなたにはわからないんです。わたしらのなかまならかっこうと一万云えば一万みんなちがうんです。」
「勝手だよ。そんなにわかってるなら何もおれの処(ところ)へ来なくてもいいではないか。」
「ところが私はドレミファを正確にやりたいんです。」
「ドレミファもくそもあるか。」
「ええ、外国へ行く前にぜひ一度いるんです。」
「外国もくそもあるか。」
「先生どうかドレミファを教えてください。わたしはついてうたいますから。」
「うるさいなあ。そら三べんだけ弾いてやるからすんだらさっさと帰るんだぞ。」
 ゴーシュはセロを取り上げてボロンボロンと糸を合わせてドレミファソラシドとひきました。
するとかっこうはあわてて羽をばたばたしました。
「ちがいます、ちがいます。そんなんでないんです。」
「うるさいなあ。ではおまえやってごらん。」
「こうですよ。」かっこうはからだをまえに曲げてしばらく構えてから
「かっこう」と一つなきました。
「何だい。それがドレミファかい。おまえたちは、それではドレミファも第六交響楽(こうきょうがく)も同じなんだな。」
「それはちがいます。」
「どうちがうんだ。」
「むずかしいのはこれをたくさん続けたのがあるんです。」
「つまりこうだろう。」セロ弾きはまたセロをとって、かっこうかっこうかっこうかっこうかっこうとつづけてひきました。
 するとかっこうはたいへんよろこんで途中からかっこうかっこうかっこうかっこうとついて叫びました。
それはもう一生けん命からだをまげていつまでも叫ぶのです。
 ゴーシュはとうとう手が痛くなって
「こら、いいかげんにしないか。」と云いながらやめました。
するとかっこうは残念そうに眼(め)をつりあげてまだしばらくないていましたがやっと
「……かっこうかくうかっかっかっかっか」と云ってやめました。
 ゴーシュがすっかりおこってしまって、
「こらとり、もう用が済んだらかえれ」と云いました。
「どうかもういっぺん弾いてください。あなたのはいいようだけれどもすこしちがうんです。」
「何だと、おれがきさまに教わってるんではないんだぞ。帰らんか。」
「どうかたったもう一ぺんおねがいです。どうか。」かっこうは頭を何べんもこんこん下げました。
「ではこれっきりだよ。」
 ゴーシュは弓をかまえました。
かこうは「くっ」とひとつ息をして
「ではなるべく永くおねがいいたします。」といってまた一つおじぎをしました。
「いやになっちまうなあ。」ゴーシュはにが笑いしながら弾きはじめました。
するとかっこうはまたまるで本気になって「かっこうかっこうかっこう」とからだをまげてじつに一生けん命叫びました。
ゴーシュははじめはむしゃくしゃしていましたがいつまでもつづけて弾いているうちにふっと何だかこれは鳥の方がほんとうのドレミファにはまっているかなという気がしてきました。
どうも弾けば弾くほどかっこうの方がいいような気がするのでした。
「えいこんなばかなことをしていたらおれは鳥になってしまうんじゃないか。」とゴーシュはいきなりぴたりとセロをやめました。
 するとかっこうはどしんと頭を叩かれたようにふらふらっとしてそれからまたさっきのように
「かっこうかっこうかっこうかっかっかっかっかっ」と云ってやめました。
それから恨(うら)めしそうにゴーシュを見て
「なぜやめたんですか。ぼくらならどんな意気地ないやつでものどから血が出るまでは叫ぶんですよ。」と云いました。
「何を生意気な。こんなばかなまねをいつまでしていられるか。もう出て行け。見ろ。夜があけるんじゃないか。」ゴーシュは窓を指さしました。
 東のそらがぼうっと銀いろになってそこをまっ黒な雲が北の方へどんどん走っています。
「ではお日さまの出るまでどうぞ。もう一ぺん。ちょっとですから。」
 かっこうはまた頭を下げました。
「黙れっ。いい気になって。このばか鳥め。出て行かんとむしって朝飯に食ってしまうぞ。」
ゴーシュはどんと床をふみました。
 するとかっこうはにわかにびっくりしたようにいきなり窓をめがけて飛び立ちました。
そして硝子(ガラス)にはげしく頭をぶっつけてばたっと下へ落ちました。
「何だ、硝子へばかだなあ。」ゴーシュはあわてて立って窓をあけようとしましたが元来この窓はそんなにいつでもするする開く窓ではありませんでした。
ゴーシュが窓わくをしきりにがたがたしているうちにまたかっこうがばっとぶっつかって下へ落ちました。
見ると嘴(くちばし)のつけねからすこし血が出ています。
「いまあけてやるから待っていろったら。」ゴーシュがやっと二寸ばかり窓をあけたとき、かっこうは起きあがって何が何でもこんどこそはというようにじっと窓の向うの東のそらをみつめて、あらん限りの力をこめた風でぱっと飛びたちました。
もちろんこんどは前よりひどく硝子につきあたってかっこうは下へ落ちたまましばらく身動きもしませんでした。
つかまえてドアから飛ばしてやろうとゴーシュが手を出しましたらいきなりかっこうは眼をひらいて飛びのきました。
そしてまたガラスへ飛びつきそうにするのです。
ゴーシュは思わず足を上げて窓をぱっとけりました。
ガラスは二三枚物すごい音して砕(くだ)け窓はわくのまま外へ落ちました。
そのがらんとした窓のあとをかっこうが矢のように外へ飛びだしました。
そしてもうどこまでもどこまでもまっすぐに飛んで行ってとうとう見えなくなってしまいました。
ゴーシュはしばらく呆(あき)れたように外を見ていましたが、そのまま倒れるように室(へや)のすみへころがって睡(ねむ)ってしまいました。
(『新編 銀河鉄道の夜』宮沢賢治 新潮文庫 平成元年)