2019年8月1日木曜日

トンボも暑いと…

ショウジョウトンボがお尻を上げていました。
これはトンボの暑さ対策です(;'∀')

これは「オベリスク姿勢」と呼ばれる、
晴れて気温が高い日に見られる行動。
体温の上昇を防ぐため、
太陽が真上にある時間帯は腹部の先端を上に向け、
日光に当たる面積を少なくしていると考えられています。

(埼玉県自然学習センター 2017年7月21日の記事より)
公園にあるのはコンクリート製ですが(^_-)
世界のオベリスク
SWITCHインタビュー 達人達「舘野泉×中村桂子」(7月20日)
お二人の対談、興味深く見ました。
お二人とも宮沢賢治がお好きだそうです。
中村さんは東日本大震災の後、
「セロ弾きのゴーシュ」を読み返して気づかれたことがある。
ゴーシュはとぼとぼ帰ると必ず水を飲む
自然の中に戻っていくときに水を一杯飲んで
これから自然の中に入るよという儀式をやっている
ゴーシュが何をしたかというと
自然の中からすてきなものを取り入れたから
最後、すごく上手に弾けたんじゃないか
都会だけじゃダメ
自然から学ばないといけないと
賢治が言っているよと伝えたくて人形劇を作られた。
中村さんの話を聞いて「セロ弾きのゴーシュ」を読み返しました。
みなさんもよくご存知の物語ですが
何回かに分けて転記したいと思いますφ(..)
長文ですので、待ちきれない方は絵本など多くの出版物があります。
  セロ弾きのゴーシュ

 ゴーシュは町の活動写真館でセロを弾く係りでした。
けれどもあんまり上手でないという評判でした。
上手でないどころではなく実は仲間の楽手のなかでいちばん下手でしたから、いつでも楽長にいじめられるのでした。
(『新編 銀河鉄道の夜』宮沢賢治 新潮文庫 平成元年)
 ひるすぎみんなは楽屋に円くならんで今度の町の音楽会へ出す第六交響曲の練習をしていました。
 トランペットは一生けん命歌っています。
 ヴァイオリンも二いろ風のように鳴っています。
 クラリネットもボーボーとそれに手伝っています。
 ゴーシュも口をりんと結んで眼(め)を皿のようにして楽譜を見つめながらもう一心に弾いています。
 にわかにぱたっと楽長が両手を鳴らしました。
みんなぴたりと曲をやめてしんとしました。
楽長がどなりました。
「セロがおくれた。トォテテ テテテイ、ここからやり直し。はいっ。」
 みんなは今の所の少し前の所からやり直しました。
ゴーシュは顔をまっ赤にして額に汗を出しながらやっといま云われたところを通りました。
ほっと安心しながら、つづけて弾いていますと楽長がまた手をぱっと拍(う)ちました。
「セロっ。糸が合わない。困るなあ。ぼくはきみにドレミファを教えてまでいるひまはないんだがなあ。」
 みんなは気の毒そうにしてわざとじぶんの譜をのぞき込んだりじぶんの楽器をはじいて見たりしています。
ゴーシュはあわてて糸を直しました。
これはじつはゴーシュも悪いのですがセロもずいぶん悪いのでした。
 「今の前の小節から。はいっ。」
 みんなはまたはじめました。
ゴーシュも口をまげて一生けん命です。
そしてこんどはかなり進みました。
いいあんばいだと思っていると楽長がおどすような形をしてまたぱたっと手を拍ちました。
またかとゴーシュはどきっとしましたがありがたいことにこんどは別の人でした。
ゴーシュはそこでさっきじぶんのときみんながしたようにわざとじぶんの譜へ眼を近づけて何か考えるふりをしていました。

「ではすぐ今の次。はいっ。」
 そらと思って弾き出したかと思うといきなり楽長が足をどんと踏んでどなり出しました。

「だめだ。まるでなっていない。このへんは曲の心臓なんだ。
それがこんながさがさしたことで。諸君。演奏までもうあと十日しかないんだよ。音楽を専門にやっているぼくらがあの金沓鍛冶(かなぐつかじ)だの砂糖屋の丁稚(でっち)なんかの寄り集まりに負けてしまったらいったいわれわれの面目(めんもく)はどうなるんだ。おいゴーシュ君。君には困るんだがなあ。表情ということがまるでできてない。怒(おこ)るも喜ぶも感情というものがさっぱり出ないんだ。それにどうしてもぴたっと外の楽器と合わないもなあ。いつでもきみだけとけた靴ひもを引きずってみんなのあとをついてあるくようなんだ、困るよ、しっかりしてくれないとねえ。光輝(こうき)あるわが金星音楽団がきみ一人のために悪評をとるようなことでは、みんなへもまったく気の毒だからな。では今日は練習はここまで、休んで六時にはかっきりボックスへ入ってくれ給(たま)え。」

 みんなはおじぎをして、それからたばこをくわえてマッチをすったりどこかへ出て行ったりしました。
ゴーシュはその粗末な箱みたいなセロをかかえて壁の方へ向いて口をまげてぼろぼろ泪(なみだ)をこぼしましたが、気をとり直してじぶんだけたったりひとりいまやったところをはじめからしずかにもいちど弾きはじめました。
 (『新編 銀河鉄道の夜』宮沢賢治 新潮文庫 平成元年)