公園に来る途中、まるで中川李枝子さんの「くじらぐも」のような雲が
目の前に現れたけど運転中で写せなかった(T_T)
「セロ弾きのゴーシュ」の続きですφ(..)
(カワウ)
次の晩もゴーシュは夜中すぎまでセロを弾いてつかれて水を一杯のんでいますと、また扉(と)をこつこつと叩くものがあります。
(『新編 銀河鉄道の夜』宮沢賢治 新潮文庫 平成元年)
今夜は何が来てもゆうべのかっこうのようにはじめからおどかして追い払ってやろうと思ってコップをもったまま待ち構えて居(お)りますと、扉がすこしあして一疋の狸(たぬき)の子がはいってきました。
ゴーシュはそこでその扉をもう少し広くひらいて置いてどんと足をふんで、
「こら、狸、おまえは狸汁(たぬきじる)ということを知っているかっ。」とどなりました。
すると狸の子はぼんやりした顔をしてきちんと床へ座ったままどうもわからないというように首をまげて考えていましたが、しばらくてって
「狸汁ってぼく知らない。」と云いました。
ゴーシュはその顔を見て思わず吹き出そうとしましたが、まだ無理に恐い顔をして、
「では教えてやろう。狸汁というのはな。おまえのような狸をな、キャベジや塩とまぜてくたくたと煮ておれさまの食うようにしたものだ。」と云いました。
すると狸の子はまたふしぎそうに
「だってぼくのお父さんがね、ゴーシュさんはとてもいい人でこわくないから行って習えと云ったよ。」と云いました。
そこでゴーシュもとうとう笑い出してしまいました。
「何を習えと云ったんだ。おれはいそがしいんじゃないか。それに睡(ねむ)いんだよ。」
狸の子は俄(にわか)に勢(いきおい)がついたように一足前へ出ました。
「ぼくは小太鼓(こだいこ)の係りでねえ。セロへ合わせてもらって来いと云われたんだ。」
「どこにも小太鼓がないじゃないか。」
「そら、これ」狸の子はせなかから棒きれを二本出しました。
「それでどうするんだ。」
「ではね、『愉快な馬車屋』を弾いてください。」
「何だ愉快な馬車屋ってジャズか。」
「ああこの譜(ふ)だよ。」狸の子はせなかからまた一枚の譜をとり出しました。
ゴーシュは手にとってわらい出しました。
「ふう、変な曲だなあ。よし、さあ弾くぞ。おまえは小太鼓を叩くのか。」ゴーシュは狸の子がどうするのかと思ってちらちらそっちを見ながら弾きはじめました。
すると狸の子は棒をもってセロの駒(こま)の下のところを拍子をとってぽんぽん叩きはじめました。
それがなかなかうまいので弾いているうちにゴーシュはこれは面白いぞと思いました。
おしまいまでひいてしまうと狸の子はしばらく首をまげて考えました。
それからやっと考えついたというように云いました。
「ゴーシュさんはこの二番目の糸をひくときはきたいに遅れるねえ。なんだかぼくがつまずくようになるよ。」
ゴーシュははっとしました。
たしかにその糸はどんなに手早く弾いてもすこしたってからでないと音が出ないような気がゆうべからしていたのでした。
「いや、そうかもしれない。このセロは悪いんだよ。」とゴーシュはかなしそうに云いました。
すると狸は気の毒そうにしてまたしばらく考えていましたが
「どこが悪いんだろうなあ。ではもう一ぺん弾いてくれますか。」
「いいとも弾くよ。」ゴーシュははじめました。
狸の子はさっきのようにとんとん叩きながら時々頭をまげてセロに耳をつけるようにしました。
そしておしまいまで来たときに今夜もまた東がぼうと明るくなっていました。
「あ、夜が明けたぞ。どうもありがとう。」狸の子は大へんあわてて譜や棒きれをせなかへしょってゴムテープでぱちんととめておじぎを二つ三つすると急いで外へ出て行ってしまいまいた。
ゴーシュがぼんやりしてしばらくゆうべのこわれたガラスからはいってくる風を吸っていましたが、町へ出て行くまで睡って元気をとり戻そうと急いでねどこへもぐり込みました。
(『新編 銀河鉄道の夜』宮沢賢治 新潮文庫 平成元年)
今朝の父の一枚です。
ウサギが走っているみたいです(^-^)
台風が近づいていますね…
それも九州には夜中に上陸するみたい…
「台風8号 あすにかけ九州接近 上陸のおそれ 接近前に備えを」