2019年8月2日金曜日

朝から…

連日、朝から気温がグングン上がり
公園の東屋の温度計が9時前なのに35度近くになっていました。
おなじみさんと高温の中でも歩けることに
感謝しないといけないねと話していましたが…
この暑さなので無理をせずに、
距離や時間を短縮しましょうと挨拶をかわしました。
連日の猛暑 熱中症の疑いで死亡 きょうも相次ぐ
昨夜の「香川照之の昆虫”やばいぜ!”」が
NHKスペシャルに登場したのでビックリしましたが
後半に、昆虫の種類や数が激減していることをとりあげていました。
人類が滅んでも昆虫は生き残ると思っていたけど認識が甘かったな…
最後まで生き残れるのはゴキブリやハエだけになるのかな?
再放送は、8月4日(日)午後5時00分~
香川照之の昆虫すごいぜ!カマキリ先生☆コスタリカへ行く」は
Eテレ8月12日(月・祝)午前9:00~9:30に放送されます。
楽しみしている番組が二つ。
いずれもNHK総合で
映画『この世界の片隅に』が、8月3日(土) 午後9:00~
病院ラジオ「がん専門病院編」が、8月7日(水)午後10時~
がんと向き合う患者とその家族の本音を届けます」(NHK-PR)
「 セロ弾きのゴーシュ」の続きを転記しますφ(..)
句読点のうちかたに宮沢賢治の文章のリズムを感じていました。
いつものことですが、原文通りではありません。
 その晩遅くゴーシュは何か巨(おお)きな黒いものをしょってじぶんの家へ帰ってきました。
家といってもそれは町はずれの川ばたにあるこわれた水車小屋で、ゴーシュはそこにたった一人ですんでいて午前は小屋のまわりの小さな畑でトマトの枝をきったり甘藍(キャベジ)の虫をひろったりしてひるすぎになるといつも出て行っていたのです。
ゴーシュがうちへ入ってあかりをつけるとさっきの黒い包をあけました。
それは何でもない。
あの夕方のごつごつしたセロでした。
ゴーシュはそれを床の上にそっと置くと、いきなり棚からコップをとってバケツの水をごくごくのみました。
(『新編 銀河鉄道の夜』宮沢賢治 新潮文庫 平成元年)

 それから頭を一つふって椅子(いす)にかけるとまるで虎(とら)みたいな勢(いきおい)でひるの譜を弾きはじめました。
譜をめくりながら弾いては考え考えては弾き一生けん命しまいまで行くとまたはじめからなんべんもなんべんもごうごうごうごう弾きつづけました。
 夜中もとうにすぎてしまいはもうじぶんが弾いているのかもわからないようになって顔もまっ赤になり眼もまるで血走ってとても物凄(ものすご)い顔つきになりいまにも倒れるかと思うように見えました。
 そのとき誰かうしろの扉(と)をとんとんと叩くものがありました。
「ホーシュ君か。」ゴーシュはねぼけたように叫びました。
ところがすうと扉を押してはいって来たのはいままで五六ぺん見たことのある大きな三毛猫(みけねこ)でした。
 ゴーシュの畑からとった半分熟したトマトをさも重そうに持って来てゴーシュの前におろして云いました。
「ああくたびれた。なかなか運搬(うんぱん)はひどいやな。」
「何だと」ゴーシュがききました。
「これおみやです。たべてください。」三毛猫が云いました。
 ゴーシュはひるからのむしゃくしゃを一ぺんにどなりつけました。
「誰がきさまにトマトなど持ってこいと云った。第一おれがきさまらのもってきたものなど食うか。それからそのトマトだっておれの畑のやつだ。何だ。赤くもならないやつをむしって。いままでもトマトの茎をかじったりけちらしたりしたのはおまえだろう。行ってしまえ。ねこめ。」
 すると猫は肩をまるくして眼をすぼめてはいましたが口のあたりでにやにやわらって云いました。
「先生、そうお怒りになっちゃ、おからだにさわります。それよりシューマンのトロイメライをひいてごらんなさい。きいてあげますから。」
「生意気なことを云うな。ねこのくせに。」

 セロ弾きはしゃくにさわってこのねこのやつどうしてくれようとしばらく考えました。
「いやご遠慮はありません。どうぞ。わたしはどうも先生の音楽をきかないとねむられないんです。」
「生意気だ。生意気だ。生意気だ。」
(アオスジアゲハ アゲハチョウ科

 ゴーシュはすっかりまっ赤になってひるま楽長のしたように足ぶみしてどなりましたがにわかに気を変えて云いました。
「では弾くよ。」
 ゴーシュは何と思ったか扉(と)にかぎをかって窓もみんなしめてしまい、それからセロをとりだしてあかしを消しました。
すると外から二十日過ぎの月のひかりが室(へや)のなかへ半分ほどはいってきました。
「何をひけと。」
「トロイメライ、ロマンチックシューマン作曲。」猫は口を拭(ふ)いて済まして云いました。
「そうか。トロイメライというのはこういのうか。」
(『新編 銀河鉄道の夜』宮沢賢治 新潮文庫 平成元年)