2019年1月20日日曜日

雨が降っていましたが…

雨が降っていましたが、父が公園に行きたいというのでやってきました。
本当は、晴れていた昨日に来たかったのですが
金曜の夜に父の歯茎が腫れて痛くなったので、
昨日、歯科に連絡して膿をとってもらいました。
ひさかたの 
月夜(つくよ)を清(きよ) 
梅の花 
心開(ひら)けて 
(あ)が思へる君(きみ)
  巻八・1661 紀小鹿女郎(きのおしかのいらつめ)

空遠くまで輝く
月夜が清らかなので
夜開く梅の花のように
心も晴れ晴れと
私がお慕いするあなたよ (中西進訳)
(『NHK日めくり万葉集vol.2』中村勝行編 講談社 2009年)
[選者 中西進 国文学者]
 四千五百十六首の歌が収められている万葉集の中で十首を選びなさい、
と言われても入る歌だと思います。
 梅の花が月光の中に開花するというだけでも素晴らしいイメージがあるのに、
そのように私はあなたのことをお慕いしていると、
恋心の比喩として詠んでいます。
感性の繊細さ、的確な表現力。
近代の詩人の作といってもおかしくない。
月光が清らかだから梅の花が開くなんて、
そんなことを詠った歌人や詩人は、全世界で何人いるだろうと思いますね。
(『NHK日めくり万葉集vol.2』中村勝行編 講談社 2009年)
――春を待たずに咲きはじめた梅の花に託して
恋の思いを詠んだのは、紀小鹿女郎です。
人生経験を積み、大人の恋を知る紀小鹿女郎は、
ウィットに富んだ歌を十二首、万葉集に残しています。
歌で「私がお慕いするあなた」と呼びかけた相手は、年下の恋人、
大伴家持だと言われています。
(『NHK日めくり万葉集vol.2』中村勝行編 講談社 2009年)
[中西]
 じつは、この人は人妻です。
夫は安貴王(あきのおう)という皇子。
その妻でありながら、年若い大伴家持に恋をしているのです。
紀女郎は、豊かな教養を感じさせる人です。
しかし、その人がいかにも人間らしく、美しい貴公子の家持に恋をするんですね。
(『NHK日めくり万葉集vol.2』中村勝行編 講談社 2009年)
――月夜に開く梅の花。
植物のひそやかな営みにも中西さんは注目します。

[中西]
 夜、人の目に触れないところでなされる植物の営み。
実際、夜来香(イエライシャン)のように、夜開く花もありますね。
梅の花が開くかどうかはわからないけれど、夜の営みの中で、
静かに、人目につかずに花を開かせているというこの歌のイメージは、
人妻の、名門の貴公子に対するひそやかな恋心そのものではないでしょうか。
(『NHK日めくり万葉集vol.2』中村勝行編 講談社 2009年)
「小鹿」と呼ばれた理由
 紀小鹿女郎は、大伴家持が青春時代に恋歌を取り交わした女性の一人。
紀氏は、現在の和歌山市一帯を本拠地とした古い由緒のある大豪族で、
小鹿女郎はそのお嬢さん。
安貴王に嫁いで、家持よりもだいぶ年上であったとする見方が有力である。
父親は紀鹿人(きのかひと)
『万葉集』に、跡見(とみ)の庄(奈良県桜井市外山)に
大伴稲公を訪ねた時の歌(巻八・1549)がある。
 そこは大伴家の田荘だが、その管理は、家持の叔母で、
稲公の姉の大伴坂上郎女が行っていたと見られる。
すなわち、鹿人は稲公ばかりでなく、坂上郎女とも面識があったことになろう。
家持と小鹿女郎との交流は、そうした叔父と叔母との関係から生まれたこともあって、
家持はいつも、その父親の存在が意識にあったのではなかったか。
(『NHK日めくり万葉集vol.2』中村勝行編 講談社 2009年)
 小鹿女郎とは、愛称のようなもので、いわるゆ諱(いみな)ではあるまい。
小鹿という呼称は、父親が鹿人で、小柄な女性だったからではないか。
女郎は敬称。
自称するものではない。
万葉集では「紀女郎」と表記されることが多く、
世間一般には、そう呼ばれていたのであろう。
(『NHK日めくり万葉集vol.2』中村勝行編 講談社 2009年)
 題詞下の注に「名を小鹿といへり」とされているが、
それは家持の書き入れではないか。
紀女郎は、家持を「戯奴(わけ)」(巻八・1460)とも呼んでいるが、
それは若輩の者に対して未熟者といったニュアンスで罵る語。
年上でプライドの高い紀女郎に対して、
その父の名にちなんで「小鹿」と呼んだのは、
若い家持の精一杯の背伸びだったのかも知れない。
    (梶川信行)
(『NHK日めくり万葉集vol.2』中村勝行編 講談社 2009年)

いみな【諱・諡】
《「忌み名」の意。魔がとりつくことを恐れて生存中は呼ぶのを避ける名の意》
①貴人の生前の実名。
②生前の行状などによって別に定めておく称号。諡(おくりな)
(『岩波古語辞典(旧版)』大野晋他編 岩波書店 1974年)
昨日から梅林への道が通行可になったので
母と見たフユザクラや梅が見たかったようです。
フユザクラが思った以上にたくさん咲いていたので喜んでいました。