2019年1月2日水曜日

青空の正月二日

今朝も青空が広がっていました。
新年の挨拶に来て下さった叔父が昨夜、
雷が凄かったと話してくれたのですが
私も父も気がつかなかったのは、局地的だったのかな?
でも、道は濡れていたので雨が降ったことはたしかなんだけど…

(あらた)しき 
(とし)の初(はじ)めの 
初春(はつはる)の 
今日
(けふ)降る雪の 
いやしけ吉事(よごと)
     巻二十・4516 大伴家持(おおとものやかもち)

新しい年の初めに立春が重なった
今日降る雪のように
ますます重なれ、良いことよ
(『NHK日めくり万葉集vol.1』中村勝行編 講談社 2009年)
――万葉集を編纂した大伴家持が、元日に詠んだ歌です。

[選者 俵 万智(たわら・まち) 歌人]
お正月になると自然に口をついて出てくる歌です。
今日降る雪のように、いっぱいいいことがあって欲しい。
その思いのこもった言葉が、五七五七七の中に納まっていますね。

――家持が大雪の年明けを迎えたのは、
天平宝字(てんぴょうほうじ)3年(759年)。
いまの鳥取県東部に当たる因幡国(いなばのくに)
地方を治める長官として、都から赴任していました。


私が中学以降暮らし、大学生時代の帰省先でもあった福井県は、
山があって海があって、そしてお正月には雪が降る。
暮らせば、雪の恐ろしく、面倒で厄介な面がわかります。
家持は雪国と縁のない育ちの人で、
もしかしたら、日本海側の雪に出会ったからこそ、
このめでたい雪の歌が生まれたのかもしれませんね。
(『NHK日めくり万葉集vol.1』中村勝行編 講談社 2009年)
――家持がこの歌を詠んだ年はたまたま、
正月と立春が重なっためでたさも加わっています。
しかし、家持の胸中は穏やかではなかったかもしれません。


やや左遷気味の人事だから。
そういう状況のなかであえて「いやしけよごと」と口に出してしまう。
見て言葉で写す一般的な歌の詠みかたではなく、
まず言葉にしてしまうことで事実を引き寄せる、
そういう気持ちも多分にあったのではないかと思います。

――家持は後に、万葉集全二十巻をまとめた際、
4516首の最後に、この自作の歌を置いています。


万葉集にとっての「いやしけよごと」
――ずっとたくさんのよい読者に出会っておくれ、
という願いが込められているのではないでしょうか。
(『NHK日めくり万葉集vol.1』中村勝行編 講談社 2009年)
天平宝字三年正月一日という日
 家持が、この歌を詠ったのは、天平宝字三年(759年)正月一日のこと。
元日は『儀制令(ぎせいりょう)』によって、
「凡そ元日には、国司皆僚属(れうぞく)郡司等を率(ひき)ゐて、
 庁(ちやう)に向ひて朝拝(でうばい)せよ。
 訖(おわ)りなば長官賀(が)受けよ。
 宴設(まう)くることは聴(ゆる)せ」と、
国司が国庁において宴会を催すことが許されていた。
新しい赴任地の正月、家持は因幡国の役人たちとの親交を図るため、
宴会を催したのだろう。
(『NHK日めくり万葉集vol.1』中村勝行編 講談社 2009年)
 その日は雪の元日だった。
積雪は『文選』謝恵連の「雪賦」にも
「尺ニ盈(み)ツルトキハ、則チ瑞ヲ豊年ニ呈ス」と見えるように、豊年の瑞兆。
左遷された任地での幸先の良い元日である。
 この歌は、「新しき年の初め」と詠い、「初春」と詠い、
正月であることを重ねて述べたような内容となっている。
しかし、この「今日」は、実は常の「初春の今日」ではなく、
19年に一度しか巡ってこない、歳旦立春(さいたんりっしゅん)
(暦日の「元日」と二十四節気の「立春」とが同じ)の日であり、
年の初め、月の初め、日の初めに、立春まで重なった特別にめでたい元日だった。
(『NHK日めくり万葉集vol.1』中村勝行編 講談社 2009年)
そのめでたさの重なりの上に、瑞兆の雪までが降っているのである
(ちなみに、
年のうちに春は来にけりひととせを 去年(こぞ)とやいはむ今年とやいはむ
という『古今和歌集』の在原元方(ありわらのもとかた)の歌は、
正月を迎えないうちに立春を迎えた「年内立春」の歌。
年内立春は、閏月(うるうづき)があれば
その年は必ず巡ってくるものでめずらいしことではない。)。
 家持は、万葉集最後の歌を、
「瑞兆の雪が降り敷くように、いよいよ頻(しき)りに吉事よ重なれ」と願った、
とびきりめでたい歌で締め括ったのである。
  (坂本信幸)
(『NHK日めくり万葉集vol.1』中村勝行編 講談社 2009年)
サギが白いのは撥水加工のおかげ

 
シラサギという名のサギはいません。
コサギやチュウサギ、はたまたダイサギ、アマサギなど
白い羽毛を全身にまとったサギの通称が「シラサギ」です。
不思議なことにこのサギたち、いつでもどこでも白いのです
(夏のアマサギはオレンジ色になります)。
にごった水のなかに入れば、汚れることは汚れますが、
気づくとまた真っ白な羽毛にもどっています。
この白さの秘訣はなんでしょう。
「白さ」というと、ついぞ漂白剤とか酵素パワーとかいった
イメージがつきまといますが、違います。
(『トリノトリビア 鳥類学者がこっそり教える 野鳥のひみつ
         川上和人 マツダユカ他 西東社 2018年)
 鳥の羽毛表面には微細な構造があり、水をはじきやすいつくりになっています。
その上、鳥の腰には「尾脂線(びしせん)」という器官があって、
そこから出る油分をくちばしで全身にすりつけることで撥水機能を強化しています。
つまり、酵素パワーで汚れを落としているのではなく、
そもそもからだに汚れがつきにくいのです。
(『トリノトリビア 鳥類学者がこっそり教える 野鳥のひみつ
         川上和人 マツダユカ他 西東社 2018年)
 鳥にとっては羽毛は飛ぶため、保温のためにだいじなもの。
また、羽毛の色はなかま同士を見分けるにも必要ですし、
オスにとってはきれいな羽毛はメスにモテるための衣装でもあります。
だから鳥たちは、いつでも羽毛の手入れを欠かしません。
 白い鳥といえばその名も白いハクチョウがいます。
たまに汚れた白鳥がいるなんていわれることがありますが、
グレーのハクチョウがいたらそれは多くの場合若鳥で、
成長すればちゃんと白くなるので、心配無用です。

つぶやき
羽毛の手入れは、鳥にとってだいじな仕事。
ひまさえあれば、しょっちゅう羽づくろいしているんだ。
(『トリノトリビア 鳥類学者がこっそり教える 野鳥のひみつ
         川上和人 マツダユカ他 西東社 2018年)