今朝も青空が広がっていました。
朝夕と昼間の気温差が大きいようです…
「朝にかけてひんやり! 日中は日ざしが暖かく」(えりの気象日記 11月5日 NHK)
10月27日の記事で『生活の悪役たち』(毎日新聞社出版)より
「毒キノコ――言い伝えによる鑑定法は信頼できぬ」を紹介した時に
『今昔物語』にも毒キノコのことが書かれていると載っていました。
調べると幾つかの話があります。
二十八巻より「比叡山横河僧酔茸誦経語第十九」の現代語訳を転記しますφ(..)
「ツキヨタケ(毒)キシメジ科」(東京都福祉保健局)
巻第二十八
比叡山横河僧酔茸誦経語第十九(ひえのやまのよかはのそうたけにゑひてきやうをじゆすることだいじふく)
本話の典拠は未詳。
引き続き毒茸中毒にまつわる笑話。
比叡の横川の僧が真偽不明の平茸を飽食してひどい中毒を起こし、横川の中堂で平癒祈禱をしたが、導師の教化が滑稽無類で満座を爆笑させた話。
その効あってか、僧は九死に一生を得たというが、笑いの焦点は、導師の臨機応変の教化の珍妙さにある。
なお、話中の教化文は、当時の説教僧の話上手と奇態百出ぶりをうかがわせる好資料。
(『今昔物語 四 日本古典文学全集24』
馬淵和夫他校注・訳者 小学館 昭和51年)
今は昔、比叡山の横川(よかわ)に住む一人の僧があった。
秋のころ、房の法師が山に行って木を切っていたが、平茸があったので、取って持ち帰った。
これを見た僧たちの中には、「これは平茸ではないぞ」と言う者もいたが、ある僧が、「これは紛れもなく平茸だ」と言ったので、汁ものに作り、栢(かえ)の油があったのを入れ、房主がこれを腹一杯食った。
その後しばらくして、身をのけぞらして苦しみ出し、あたり一面へどを吐き散らす。
そこで、どうしようもなく、僧衣を取り出し、横川の中堂に持って行って誦経(ずきょう)料にした。
そして、[ 欠字 ]という僧を導師としてこのことを申し上げさせた。
導師は祈禱を行って、最後に教化の言葉を述べた、「一乗の峰には住んでおられるが、六根・五臓の[ 欠字 ]位を習っておられないので、舌の所に耳(茸)を用いたため、病を得られたのである。もし霊鷲山(りょうじゅせん)に住んでおられたなら、枝折(しおり)を尋ねつつもお登りになれたであろう。きっと見知らぬ茸(巌)と思われたご様子で、一人迷いなさったのである。回向大菩提(えこうだいぼだい)」。
こう言ったので、導師に続いて誦する役の僧たちは腹の皮が切れるほど笑いこけた。
かの僧は死ぬほど苦しんだ末、やっと助かった、とこう語り伝えているということだ。
栢の油 カヤの古名。4月ごろの開花で、秋に熟する種子から食用油が精製された。
横川の中堂 本尊は慈覚大師作と伝えられる聖観音。脇侍は毘沙門・不動(都名所図会)。
(「比叡山延暦寺 (延暦寺)」 都名所図会 国際日本文化研究センター)
誦経料 病悩本復のための祈りの料としてさし出した。
舌の所に耳(茸)を用いたため (六根五臓を清浄に保てる境地に達していないので)舌を用いるはずのところに耳を用いたために。
舌と耳を取り違えたがゆえに。
「耳」に「茸(きのこ)」意を掛けた言い方のおもしろさがあり、したがって、舌のある所にきのこを持っていったために(きのこを食べたがゆえに)の意ともなる。
お登りになれたであろう 「山上に登りつきなさったのでしょうに」の意と、「めでたく往生を遂げられたでありましょうに」の意を掛けたもの。
「舌の所に…」とともに、きのこにあたった僧を揶揄した物言い。
見知らぬ茸(巌) 「茸」に「嶽」を掛けたもので、「不案内な山」と「見知らぬきのこ」の意。
迷いなさった 「道に迷う」意と、「きのこの毒にあたって苦しむ(物ヲ突迷フ)」意を掛けたもの。
回向大菩提 回向文の結びの常套句。迷いを転じて悟りに向かうべしの意。
(『今昔物語 四 日本古典文学全集24』
馬淵和夫他校注・訳者 小学館 昭和51年)
キノコはどんな生き物か
きのこは花
地上や樹上に発生するきのこは、植物の花に相当する生殖器官で子実体ともいう。
花が種子をつくるのに対し、きのこは胞子をつくり、散布して繁殖をはかる。
胞子は生殖細胞
胞子は、繁殖という点では種子と同じだが、種子が卵と精子の受精でできる胚であるのに対し、胞子は卵または精子に相当する生殖細胞である。
(『都会のキノコ図鑑』大舘一夫、長谷川 明監修 八坂書房 2007年)
キノコの本体は菌糸
胞子が発芽して菌糸となり、地中や動・植物の体内に伸長する。
菌糸は細長い細胞が縦につながっただけの簡単な構造だが、植物の根・茎・葉に相当するキノコの本体で、菌糸ときのこ(子実体)でキノコ(個体)は成り立っている。
菌糸を本体とし、胞子をつくる生物を菌類といい、きのこ(子実体)をつくらないカビやコウボもキノコの仲間である。
キノコは養分をつくらない
キノコは、自らは養分をつくらず、それをほかの生物から摂取する。
これを従属栄養といい、その栄養法には、生物の死骸や排泄物から油分をとる腐生、生きた生物からとる寄生、植物の根に菌根という連結部をつくって物質交換を行う共生などがあり、その栄養法により、それらのキノコを腐生菌、寄生菌、共生菌(菌根菌)とよぶ。
キノコは植物でも動物でもない
キノコを含む菌類は、その体制、生殖法、栄養法のいずれにおいても植物、動物とは異なり、進化の歴史も異なっている。
さらに、原生生物界、原核生物界を加えた生物五界説では、キノコは真菌界に属することになる。
キノコはリサイクルシステムの主役
原始生物の栄養法は有機物の分解・吸収で始まり、やがて有機物を生産する植物、消費する動物が出現し、分解・吸収は菌類に受け継がれた。
これにより完成したリサイクルシステムがその後の生物の進化の歴史を支えた。
キノコは有機物を最終的に無機物に戻し植物に供給する。
まさにリサイクルシステムの主役といえる。
(『都会のキノコ図鑑』大舘一夫、長谷川 明監修 八坂書房 2007年)
「ひょっこり出現 キノコの秘密」(中学・高校 NHK)
「きのこ」(しぜんとあそぼ 幼保 NHK)
幼児向きだとあなどってはいけませんよ(^_-)-☆
今朝の父の一枚です。
ジョウビタキ♀とオオバンを写しています(^^)v