2019年10月31日木曜日

言葉がでない…

5時前に目を醒まして携帯でニュースをチェックすると
まっ赤な画像がトップに出ていた。
高校と大学時代に里帰りした時は「首里城跡」だった。
ノートルダム大聖堂の火事の時も
フランスの人々は同じような気持ちで見つめていたのかな…
首里城 琉球王国の宮殿~外交と祈りの空間」(NHK)

6分でわかる沖縄戦」(NHK 戦争証言アーカイブス

【写真で見る】ノートルダム大聖堂の火災 焼失したもの、残ったもの」(BBC)
10月28日の記事で太宰治の『待つ』を紹介しましたが、
原民喜も昭和19年に「三田文学(2月号)」の「前線将兵慰問文特輯」に発表した
弟へ』という作品があります。
  弟へ

 僕は近頃「無心なるもの」と題して短文をノオトに書溜めてゐる。
これは通勤の道すがら、目に触れた微笑ましいものを、何気なく書綴つたものにすぎないのだが、それがだんだん溜つてゆくといふことも何となく僕にはたのしいことなのだ。
今日(けふ)はそのうちから、三つ四つ君にお目にかけよう。
なにしろ中学生相手の僕のことだから、文章も中学生じみてゐるかもしれないが、まあ笑つて読んでくれ給へ。
(『定本原民喜全集Ⅰ』 青土社 1978年)

  燕

 大神宮下の駅では、電車が着くホームの軒に、燕の巣がある。
軒とすれすれのところに電車の屋根は停まるのに、燕はあやふく身を飜へして巣に戻る。
それにしても、巣の中の仔は電車の雑音でおちおち睡れないであらう。
国民学校の生徒を引率した先生が、珍しげに軒の巣を見上げてゐた。
あまり天気は良くないが、平穏な遠足の帰りなのだらう。
燕は線路を飛越え、人家の陰へ消えてしまつた。
  貝殻

 八千代橋の手前の貝殻に埋れたやうな露次は、どこよりも早く夏の光線が訪れる。
どの軒下も大概貝殻が積重ねてあり、それは道路の方にも溢れ、奥では盛んに貝を剝いでゐるので、刻々と殖えて行く白い殻で、やがてそこいらは埋没してしまひさうだ。
(から)の弁当箱を示し、貝を売つてくれないかと男に尋ねると、あまりいい顔もせず黙つて貝を剝いでくれる。
それが出来る迄暫く軒下にたたずんでゐると、地面の白い光線がくらくらして、ふと側に子供が立つてゐる。
よごれた絵本を展げて、眩しげにこちらを見てゐるのだが、その展げた絵本は南洋の椰子の樹の日の丸の絵で、その中から子供は抜け出して来たやうにもおもへる。
  牛

 暑い暑い宮本町の坂。
夏の朝、牛はゆつくりゆつくり、このだらだら坂を二つ越えて行く。
途中の家畜病院の空地に牛や馬が繋がれてゐるところまでやつて来ると、歩いてゐた牛はもーおと鳴く。
繋がれている牛の方は何とも応えない。
ある日休暇の兵隊が二三人づれで、繋がれてゐる牛の側に立寄つた。
そして一人がそろつと牛の耳を撫でてみた。
 坂を下つて来る牛もつらさうだ。
よく見ると牛の鼻のまはりには四五匹の蠅が黒くくつついてゐる。
牛はそれをじつと怺へたまま歩いてゐるのだ。
  猫

 ある朝、坂の下の方から猫の啼声がだんだん近づいて来た。
と思ふうちに後ろから自転車がやつて来た。
後に函らしい風呂敷包が括り附けてあり、啼声はその中からするのだ。
ところで、自転車に乗つてゐる人の後姿は、妙に忙しげで、どうも早く片づけてしまひたいといふ風なのだが、哀れな泣声はなかなか歇まない。
自転車がもう遠ざかつてしまつても、まだその泣声はまだつづいてゐる。
あの坂の向ふは茫々とした畑となつてゐるのだ。

  津田沼

 上野行に乗替へるため一番線ホームに行くと、そこら一杯に葱・菠薐草・大根の束をちらかし黒い大きな風呂敷包の山の中に坐り込んで、弁当を披いてゐるもの、襤褸ぎれを綴り合はせて足袋を拵へてゐるもの、女行商人の生きの姿はとりどりであつたが――それも今は既に見られない風景となつた。
嘗て、このホームから向のホームを見てゐたら、国民服を着た青年と若い娘が睦じげに佇んでゐた。
その娘の姿は婦人雑誌などのよく出来た絵にありさうな、凛とした姿で、青空を背景に、並んで立つてゐる男の胸のあたりをたのもしげに見上げてゐるのであつた。

(菠薐草 ほうれんそう)

  木の葉

 烈風が歇んだ野の道を、二三人の子供がパラパラと駈出して来た。
背の低い羽織を裏返しに着てゐる、何か興奮してゐると思つたら眼には青い木の葉をくり抜いて嵌めてゐるのだつた。
(『定本原民喜全集Ⅰ』 青土社 1978年)
原民喜のことをあまり知らなかったのですが
梯久美子さんの『原民喜 死と愛と孤独の肖像』を読むと
梯さんの原民喜への優しいまなざしが溢れてくるようです。
弟へ』の解説の一部を転記するとφ(..)
 六篇はいずれも、ヒステリックなまでに戦時色が強まった1944(昭和19)年によくぞ書いて発表したと思えるような作品である。
常套句を使わず、声高にならず、平易な文章で何でもない日常を描く――それは、非日常の極みである戦争に対する、原の静かな抵抗であった。
(『原民喜 死と愛と孤独の肖像』梯久美子 岩波新書 2018年)
梯久美子さんの本をまだ読まれていない方は、一読をお勧めします。
読むと原民喜の言葉に触れたくなると思います。
前に紹介した記事ですが
梯久美子×三浦しをん「悲しみの詩人、原民喜を語る」〟(web岩波 たねをまく)
原民喜の作品は文庫本でも読むことができます。
小説集 夏の花』(岩波文庫)

夏の花・心願の国』(新潮文庫)
など
プロフェッショナル 仕事の流儀「精神科医・本田秀夫」
このような番組を見ると心が重たくなることが多いのですが
本多秀夫さんの笑顔を見ているとこちらもニコニコしてきます。

矢野顕子さん

NHKプロフェッショナルで発達障害の専門医 本田秀夫さんを観ている。
なんかすごく心が気持ちよくなりました。
85才のお父さんの自閉スペクトラムっぷりが最高。
普通ってなんだろうってほんと、思うなあ。
矢野顕子はどの辺にいるのかなあ。。


Kazeも自分のこと注意欠如型の発達障碍だと思っています。
片付けられない、落とし物をよくする、期日が迫るまで仕事ができないなどなど
高校時代などに「お前は変わっている」とよく言われていました。
(本人はその自覚がない…(^^ゞ…)

11月5日(火) 午前0:25から再放送があります(4日深夜と言った方がいいかな)
今の医療制度は本多秀夫さん
8月のプロフェッショナルで紹介された
内科医(女性外来)の天野惠子さんのような丁寧な診察には
診療報酬がほとんど出ないシステムになっている。

患者に薬を処方しないといけないし
入院患者も3カ月以上の入院はできない。
叔父も病院をたらい回しにされている。
昨日の記事で
“病院再編” 全国424病院 実名公表で広がる波紋 各地の声は」(NHK)
にある経営健全化というのは患者を薬漬けにして
さっさと退院させろと厚生労働省が病院に迫っているのだと思う。
今朝の父の一枚です(^^)v
ジョウビタキ♂に出会っていました。
Kazeも出会ったのですが、雌と雄がバトルをしていて
ピントを合わせる間もなく飛んで行きました(T_T)
夕食の時、三人(父、妹、姪)で2017年10月13日に
沖縄を訪ねた時に首里城も行ったのにと話していました。
妹も辛くてテレビを見ることができなかったと…
(画像は姪が写した写真です)