2016年11月28日月曜日

あやしい天気でしたが…

花枇杷や無き父なれば死せりと應ふ
(『しづ子』)
山家集 下 雑 1123
   返し   大宮の女房加賀
君をおきて 立ち出づる空の 露けさに 秋さへ暮るる 旅の悲しさ

あなたを後に残し,都へと出発しますその空も時雨がちで,わたくしも涙がちとなり,
その上秋までも終わろうとしている旅立ちは悲しいことです。
大宮の女房加賀 「大宮」は二代(近衛・二条両天皇)の后であった太皇太后多子。
「加賀」は花園左大臣有仁の恋人でその歌により「伏柴の加賀」と称され,
待賢門院(璋子)加賀と同一人説もある。
◇君をおきて 「おき」は「露」の縁語。
◇露けさ 時雨がちであることと,涙がちであることをいう。
(『山家集』)
(「梢の巣にて」より)
   断章17  
草木をわたる秋風と
わたりどりの翼の陰影(かげ)と
わたしの溜息
そしてもろこしばたけでは
もろこしが穂首を低く垂れてゐる
その穂首からは
黄金色の大粒な日光の
なみだのやうなしづくが
ぽたりぽたりと地に落ちてゐる
ぽたりぽたりと……

(『山村暮鳥全詩集』 彌生書房 昭和39年)

良寛の手毬の如く鶲来し  川端茅舍
(『講談社版 カラー図説日本大歳時記[座右版]』 昭和58年)
私の無き空にすら全(また)くよき日は乏(とぼし)きを人はいはんや   橘曙覧覽

○私の無き空―私心というものがない空。
○乏きを―少ないのに。
○人はいはんや―人においてまして。
▽私心というものがない空にさえ全くよい日は少ないのに,
まして人においては無欠なものはないのである。
(『日本古典文学大系93 近世和歌集』
   高木市之助 久松潜一校注 岩波書店 1966年)
鶺鴒の吹別れても遠からず  阿波野青畝
(『図説俳句大歳時記 秋』 角川書店 昭和39年)
つややけきつはの葉の上にかすかなる日の影しみて冬ならむとす  松村英一
(『植物歳時記』)

あきかぜはもみぢをあだにおもへばやまきのとさへふきあてにかり   良寛

○あだ―自分を害するもの。敵。
○まきのと―杉戸。この下「に」脱か。
▽秋風は紅葉をかたきとでも思っているのであろうか,
ただ吹き散らすばかりでなく,杉戸にまで吹きあててしまった。
(『近世和歌集 日本古典文学大系93』
    高木市之助・久松潜一校注/岩波書店 昭和41年)

水鳥よぷいぷい何が気ニ入らぬ  

(『古典俳文学大系15 一茶集』
丸山一彦 小林計一郎校注者 集英社 昭和45年)
(ぷい「ぷい」はくの字点)
(ひひらぎ)の花一本の香(かをり)かな   高野素十
(『日本の詩歌30』)
(かげ)りあふを避けあふ友ら秋桜  香西照雄
(『講談社版 カラー図説日本大歳時記[座右版]』 昭和58年)