2025年1月17日金曜日

1月17日

朝のうちはまだ青空が見えていましたが
日が陰るとなんか風がでてきたように思えて寒かったです。
今朝のEテレ0655の「リクエストにおこたえFd(フライデー)」の曲は
〝「うまくいく」のおまじない toi toi toi
明日から始まる大学入学共通テストを受ける受験生への応援メッセージが流れていました。

今週末は大学入学共通テスト 万全な体調で試験に臨むには」(NHK 1月15日)
今月の100分de名著は、安克昌(あんかつまさ)さんの「心の傷を癒すということ」
講師をされている宮地尚子さんが中井久夫さんの追悼特集号に

 周縁の媒介者=翻訳者 宮地尚子

 …前略…

 安克昌さんとのこと

 中井先生の弟子であり私の仲間でもあった安克昌さんのことも思い出します。
安さんが2000年に亡くなられたときの先生の弔辞は本当に鬼気迫る名文でした。
2020年に安さんがモデルのドラマ『心の傷を癒すということ』がNHK総合で放映された際には私も田中究さんとともに精神医療監修として制作にかかわったのですが、そこにも中井先生をモデルとした永野という人物が登場していて(先生ご自身も車椅子で撮影現場を見にいらっしゃったと聞きます)、不思議な気持ちになりました。
もちろんドラマですから全てが事実そのままではないものの、安さんにとっての中井先生の存在、中井先生が安さんに託したもの、二人の心が通じ合うさまなど、実際にそこにいわたけではないけれど目撃させたいただいた気がしたのです。
(『現代思想 総特集中井久夫 1934-2022』2022年12月臨時増刊号 青土社)
 特に印象深かったのは、主人公の安和隆が大学の廊下で初めて永野に話しかける場面での、次のようなやりとりです。

 和隆 質問があります。
 永野 どうぞ。
 和隆 先生は寂しくないですか。
 永野 寂しい? なぜかな。
 和隆 先生の書かれた本を読みましたが、並外れた知性ゆえに普通の人とは違うものを見ておられるようです。
たとえば――(言葉を探し)誰もが朝日に目を奪われている時、先生は、その光が決して届かない海底の魚をご覧になっている。
 永野 ……(聞いている)
 和隆 先生が魚について誰かと議論したいと思っても、その魚が見えている者は他にいません。
自分を、自分の考えを誰も分かってくれないというのは、どのような孤独でしょうか。
  (NHK土曜ドラマ『心の傷を癒すということ』 脚本=桑原亮子、2020年)
 ここでの和隆の台詞はおそらく、少なくとも二つの意味があります。
一つは言うまでもなく中井先生のような「並外れた知性」をもった人の孤独ですが、実はもう一つ、患者さんも似たような孤独を抱えていると思うのです。
それは普通「並外れた知性」とは考えられないけれど、しかし本人にとっては特殊な、論理的な意味があるのかもしれない。
そういう病理をもっている人に精神科医がいかにして近づいていけるのか。
中井先生はそれができる数少ない一人であって、そこに気づいていたからこそ安さんは先生に惹かれていったのでしょう。
そのような二人の関係を見事に言い当てたやりとりだと思います。
この後、ドラマでは和隆が永野に名前を聞かれて「安といいます」「不安の安です」と答えるのですが、ここにも、孤独や不安をもつ人間にとっての深い理解者としての、あるいは理解できなくてもそばにいてくれる。
そういう中井先生の在り方が示唆されている気がしました。
 安さんがもし生きていたら、中井先生がそうであったように、社会や文化の話と心の内面の話とを有機的につなげることのできる書き手になっていただろうと私は思います。
 …後略…
(『現代思想 総特集中井久夫 1934-2022』2022年12月臨時増刊号 青土社)
 「このドラマは、安さんのご家族への贈り物だと思って作りたい」 
 ――『心の傷を癒すということ』がNHK土曜ドラマになるまで
              京田光広

 …前略…

  撮影が始まって――現場にいた特別な人

 2019年10月7日、撮影初日。
現場には、ある特別な人がいた。
安秋実さん、安さんが亡くなる二日前に生れた次女である。
18歳になった秋実さん、父親譲りの映画好きで、撮影の期間だけアルバイトでスタッフに加わった。
フットワークも軽く、明るく現場を駆け回る秋実さんは貴重な戦力だ。
(『新増補版 心の傷を癒すということ 大災害と心のケア』安克昌 作品社 2020年)
 秋実さんには父親の記憶はない。
生まれたばかりで告別式にも参列できなかった。
母の末実さんは克昌さんの話をよくするが、精神科医としてどんなに立派だったか、どんな素敵な男性かはわかっても、どんな人だったのか、父親としてのイメージが思い描けずにいた。
どんな声だったのか、どんな字を書くのだろう、幼い頃からそんなことを考えていたという。
「安克昌さんに会いたい……」、それは娘の秋実さんの思いでもあった。
 その秋実さんが制作スタッフの一員として、父親に向き合うことになった。
大学時代、恩師の中井久夫さんの講義を克明に記した「安ノート」、几帳面に綴られた父親の字を初めて見た。
著書『心の傷を癒すということ』の元になった古びた震災直後の新聞の連載記事からは、被災地で格闘を続ける父親の姿が浮かび上がってきた。
ドラマの小道具として克昌さんが九歳の頃の宿題のプリント作りをまかされた。
在日という出自に向き合う幼い頃の父親にも思いを馳せた。
日々、秋実さんの中で克昌さんの存在が確かなものになっていった。
 初日のラストシーン、JR元町駅近くの小高い公園の坂道を、神戸大学病院の精神科医となった安和隆が一人、歩く。
設定は震災前日の夜、朝になれば一瞬にして失われるとは思いもせず、愛する神戸の夜景を眺めるシーンだ。
 現場に仕事を終えた妻の安末実さんも駆けつけてくれた。
坂道を登ってくる柄本佑さんが演じる和隆の顔が見えた瞬間、末実さんの目から涙が溢れだした。
「(克昌さんに)寄せすぎやん」と思わず声を上げる末実さん。
シルバーのメガネにオールバック気味のウエイブがかかった髪型、細目で優しくも、力強い眼差し、末実さんを泣かすつもりはないが、スタッフは克昌さんを思って準備した。
 末実さんのかたわらに宮地尚子さんの姿があった。
精神科医療の考証など、ドラマをずっと陰から支えてくれたのが宮地さんだった。
克昌さんが末実さんの誕生日には必ず花束を贈ることを知っていた宮地さんは、安さんが亡くなった後の最初の誕生日、安さんの代わりにと花束を末実さんに贈ったという。
 あれから20年近く、この日も、宮地さんは末実さんに寄り添い、小さな背中にそっと手を置いて、優しくさすり続けていた。
すると撮影中にもかかわらず、カメラの近くにいた秋実さんが母親の元に駆け寄ってきた。
手を握り、つとめて明るく声をかけた。
「お母さん、なんで泣いているかは、聞かへんで」。
 末実さんは泣きながら、思わず噴き出すように笑った。素敵な笑顔だった。
 この二日前、私、安達、柄本佑さん、脚本家の桑原亮子さんはじめメインスタッフは、末実さん、長女の恭子さん、秋実さんと一緒に、ドラマ制作の報告に克昌さんの墓参りに行った。
 10月というのに汗ばむ陽気だった。
一人一人、拝ませていただいた後、最後に秋実さんが静かに手を合わせた。
いつものように父親に近況報告を済ませた後、最後に「ありがとう」と声をかけたという。
「父親に会いたい」と願っていた自分に、その機会を作ってくれたのも克昌さんだったから。
「このドラマは、安さんのご家族への贈り物だと思って作りたい」と、監督の安達は、撮影の前、スタッフ全員を集めて語っていた。
お墓参りを終えて帰る時、私は一番後ろから、安さん一家を囲むようにして歩くみんなの背中を見つめていた。
すると、高台にある墓地の向こうに広がる住宅街の風景が目に飛び込んできた。
何気ない日常の風景が心に沁みた。
 阪神・淡路大震災から25年、「誰も独りぼっちにさせへん、てことや」という言葉が寄り添っていた。
(『新増補版 心の傷を癒すということ 大災害と心のケア』安克昌 作品社 2020年)
今朝の父の一枚です(^^)/

 ガマ 蒲 
   ガマ科ガマ属

分類 多年草
学名 Typha latifolia
『本草和名』  蒲黄=加末乃波奈(がまのはな)
        香蒲=女加末(めがま)
『和名類聚抄』 蒲=加末(がま)
        蒲黄=加末乃波奈(がまのはな)

 池などに生え、なによりもソーセージのような穂が特徴的な植物です。
かつては葉を編んで敷物「蒲莚(がまむしろ)」にしました。
『養老令(ようろうりょう)』(職員令)に規定される掃部正(かもんのかみ)の職掌に「蒲・藺・葦・簾等事」とあり、ガマが使用されていたことがわかります。
これが「蒲団(ふとん)」の語源です。
やがて蒲莚の材料はカヤツリグサ科のフトイ(太藺、学名:Schoenoplectus tabernaemontani)に代わります。
(『有職植物図鑑』八條忠基 平凡社 2022年)
 午後から心臓リハビリ。
待ち時間に読んでいたのが、昨夜、購入した
新増補版 心の傷を癒すということ 大災害と心のケア

実は、最初に出版された『心の傷を癒すということ』を図書館で借りて読んでいました。
265頁の本が485頁に増補されています。
この本の「あとがき」の日付が1996年3月11日になっています。
それから15年後の2011年3月11日に東日本大震災が発生しました。
(中井久夫さんの弔辞は後日、紹介したいと思います)

心臓リハビリはエアロバイク(自転車)を漕ぎながら心電図を計ってもらいました。
運動時間 30:54
消費カロリー 20.16kcal
回転数 1570回でした。