晴れているなぁと思ったら雲が陽を隠し、冷たい風も吹いてきました…
「大阪市立の小中学校で3学期の始業式」(関西NHK)今日は十日戎。
今宮戎も西宮戎もお参りしたことないけど…
〝1年の商売繁盛祈願 大阪の今宮戎神社で「十日戎」始まる〟(関西NHK 1月9日)
〝西宮神社 3年ぶり「福男選び」 参拝者が境内を駆け抜ける〟(兵庫NHK)
京都ゑびす神社は、京都を訪ねた時にお参りしたことが何度かあります。
私のように耳が遠いようなので優しくトントン叩きます(2015年7月9日)。
〝商売繁盛の神様 京都の恵美須神社で「十日ゑびす大祭」〟(京都NHK 1月9日)第1章 暮らしの歳時記
十日戎(とおかえびす)
…前略…
十日戎は関西各地の恵比須神社ではどこでも行われるが、大阪の今宮戎が最も盛大で、十日が本祭、前日が宵戎、翌日が残り福と三日間行われる。
着飾った巫女(みこ)や福娘が、参詣人に小宝(こだから<小さな小判、金箱、小槌などを束ねたもので吉兆という>)を付けた福笹を授け、「商売繁盛で笹持って来い」と賑やかに囃し立てる様子は、テレビなどで全国的に有名だ。
最近は西宮戎(兵庫県西宮市)の福男が一番を競う姿も有名になった。
本祭の日は「宝恵駕(ほうえかご)」といって、紅白の布で飾った駕籠(かご)に、正装した南地の若い芸妓を乗せ、行列を作って社内に繰り込む慣わしもある。
戦後は芸妓が減って今里などから応援を求めていたが、最近は大阪の花街が全滅状態になり、道頓堀出演の歌舞伎の若手俳優や文楽人形、さらに福娘も動員して何とか続けている。
(『京なにわ 暮らし歳時記』山田庄一 岩波書店 2021年) 十日戎には、戦前は一般の商家でも、床の間に恵比須神の画幅を掛け、神酒や洗い米、それい一対の睨(にら)み鯛(だい)を供える。
鯛は20センチほどのものに赤い絹糸を掛けて鰭(ひれ)を開き、勢いよく反った形に整える。
昔の道頓堀各座では、緋縮緬(ひぢりめん)の綿入れで長さ2メートルほどの大きさの睨み鯛を作り、鰭などを金糸で縫い取り豪華にして、舞台の欄間に掛け、真ん中に大きなゴンボを松の内だけ飾るのが決まりだった。
戦後は絶えていたが、何とかこの仕来りを残したいと思い、私が文楽劇場を担当したときに復活させた。
ただ戦前のように豪華なものは無理なので、発泡スチロールで形を作って彩色し、注連の代わりに当年の干支の字凧を使ったが、これは現在も踏襲されているようだ。
なお授かった福笹は年末まで神棚に供える。
…後略…
(『京なにわ 暮らし歳時記』山田庄一 岩波書店 2021年)〝コロナに効く? 中国で桃缶「爆買い」、専門家は「薬効ない」と否定〟(AFP 1月5日)
日本で感染拡大が起きた時のようです。
大阪の知事が不確かな情報を流したことは『医療民俗学序説』を転記したときに紹介しました(2022年12月26日)
桃といえばイザナキが黄泉国(よもつくに)から逃げる場面を思い出します。 黄泉国と黄泉比良坂
…前略…
現世との境にある黄泉比良坂(よもつひらさか)の下まで逃げたところで、そこに生えていた桃の実を三つ採って、待ち伏せして投げると、追っ手の軍勢は一人残らず退散してしまった。
そこでイザナキが桃に向かって言うには、「おまえは今ここで私を助けてくれたように、これからも現世であるこの葦原中国(あしはらのなかつくに)の民が苦しい目に遭った時には助けてやってくれ」と言った。
そして桃に
意富加牟豆美命(オホ・カム・ツ・ミのミコト)という名を授けた。
…後略…
(『日本文学全集01 古事記』池澤夏樹訳 河出書房新社 2014年) 動物界に入り込む植物ウイルス
植物に寄生するウイルスは植物の間でのみ広がり、動物に感染することはない。
しかし、唯一の例外として、植物ウイルスに由来すると考えられる動物ウイルスが1種類見いだされている。
それはサーコウイルスと呼ばれる、もっとも小型のDNAウイルスで、子ブタの発育を阻害するために、養豚産業で重要視されているものである。
(『新版ウイルスと人間』山内一也 岩波科学ライブラリー 2020年) サーコウイルスには、バナナやココナツに感染するものもあり、植物サーコウイルスと呼ばれていたが、最近、ナノウイルスという新しい名前で呼びれるようになった。
サーコウイルスとナノウイルスでは、ウイルス増殖に重要な働きをする遺伝子が非常によく似ているが、最近の研究から、サーコウイルスはナノウイルスが、カリシウイルスと呼ばれる動物のウイルスとの間で遺伝子交換を起こしたために生れたものと考えられている。
おそらく、植物の樹液に含まれていたナノウイルスにたまたま動物がさらされて感染を受け、動物の体内でカリシウイルスと遺伝子交換がおきたのではないかと推測されているのである。 一方、バナナやジャガイモに狂犬病ウイルスや小児の下痢症のウイルスの遺伝子を組み込んで、それをワクチンに用いようとする研究が盛んに行われている。
これは食べるワクチンであって、値段が安く注射器も不要という大きな利点があるため、とくに発展途上国向けの夢のワクチンとして期待されている。
しかし、サーコウイルスのように、植物のウイルスと動物のウイルスが混じりあうおそれを指摘する意見も出されている。
ワクチンの開発研究が植物のウイルスを人間社会にもたらす潜在的危険性も考慮しなければいけないとうわけである。 ヒトの命を支えるウイルス
ウイルスは進化の推進力として働いていた側面はあるものの、一般には病気の原因とみなされるだけであった。
ところが、ウイルスが人間の命を支えている可能性が明らかにされつつある。
そのひとつはヒト内在性レトロウイルスと呼ばれるウイルスで、これが妊娠中の母親の胎内で胎児を保護する重要な役割を担っていると考えられているのである。
胎児は父親と母親の遺伝形質を受け継いでおり、父親由来の組織成分は母親にとっては異物であるため、胎児はいわば父親の臓器を移植したような状態である。
そのため、胎児は本来ならば母親の免疫反応で拒絶されてしまうはずである。
この拒絶反応から胎児を守っているのは、合胞体栄養細胞が形作っている一層の胎盤をとりまく膜である。
これにより、拒絶反応の担い手である母親のリンパ球は胎児の血管に入るのを阻止されている。
一方で胎児の発育に必要な栄養分や酸素はこの膜を通過することができる。
合胞体栄養細胞は胎児の栄養細胞どうしが融合して作られるものであるが、妊娠した際にどのようなメカニズムで作られるのかは、長い間、謎であった。 その融合を引き起こしているのが、ヒト内在性レトロウイルスのエンベロープにあるシンシチンと呼ばれる蛋白質であるという証拠が2000年に発表された。
ヒト内在性レトロウイルスは2500万年くらい前に霊長類の染色体に組み込まれたと考えられているウイルスで、ふだんは冬眠状態で親から子に受け継がれてきている。
シンシチンは、細胞を融合させる働きを示すが、これが女性の妊娠初期の胎盤が作られる時期に合胞体栄養細胞に多量に作られていることが明らかにされたのである。 一方、メタゲノム解析で、腸内細菌に多数のファージが共生していることが明らかになりつつある。
これらは、腸内細菌の生態系に影響を及ぼすことにより、また、直接、我々の免疫系にかかわることで、健康と病気に重要な役割を果たしていることが示唆されている。
病原体としてのウイルスは、ウイルスの姿のごく一部であって、我々の命を支える生命体としての姿がこれから明らかにされていくであろう。
(『新版ウイルスと人間』山内一也 岩波科学ライブラリー 2020年)