2022年5月2日月曜日

八十八夜

公園に向かう途中に高校生が登校している姿をみて、今日は平日なんだとわかった。
というσ(^^;)は毎日が日曜日だけど…
新花つみ 十一日

 柚(ゆ)の花やゆかしき母屋(もや)の乾隅(いぬゐずみ)

 母屋の北西の一隅に、何代も前からの柚(ゆず)の花がひっそりと香気を放って奥ゆかしい。

 柚の花(花柚とも)は寒地にも生育するが、成長は遅い。
夏、白色五弁の小花を開く。
この「ゆかし」は芭蕉の「柚の花や昔しのばん料理の間」(『嵯峨(さが)日記』)を踏むか。
毛馬(けま)の生家の回想かもしれない。
◇乾隅 北西隅。屋敷神を祀(まつ)る方位。
(『與謝蕪村集 新潮日本古典集成』清水孝之校注  新潮社 昭和54年)
  八十八夜(はちじゅうはちや)

 立春から数えて八十八日目にあたる日のことで、新暦では5月2日ごろになる。
これが暦本に記されるようになったのは明暦(1656)年の伊勢暦からで、その後伊勢暦師の要望によって貞享3(1686)年暦に採用されて普及した。
二百十日とともに日本独特の暦注で、雑節の一つとなっている。
「八十八夜の別れ霜」「八十八夜の忘れ霜」などといって、この日を過ぎれば霜害の心配がなくなるとして、八十八夜を目安に稲の苗代への種蒔きを行なう所が多い。
日本は南北に長い国で、北と南では気候のずれが大きく、実際には東北・中部地方ではこれ以後も霜が降りることがある。
種蒔きなどの農作業は各地方ごとに気候の変化にだけあわせて行えばよいはずであるが、八十八夜を目安にする所が多いのは、花鳥草木、雪融けの様子によって気候の変化を知る自然暦のほかに、暦に生活の基準を求めたことのあらわれである。 (小川)
(『三省堂 年中行事事典(旧版)』田中宣一、宮田登 編 三省堂 1999年)
立夏から小満のころ
 昭和の暮らしと日本人の心性


…前略…

 わが家では祖母が自家用のお茶を作っていました。
わずかな茶を植えた茶山で茶摘みをし、蒸したり炒(い)ったり揉(も)んだりして乾燥させた素朴なお茶です。
幼児のころから祖母手製のお茶を飲んでいて、大人とおなじお茶を飲むようになったのは中学生になってからでした。
私の茶好きはこのころからです。
今にして、祖母のお茶は香ばしくておいしかったと思うのです。
なにしろ、手間隙(ひま)かけたお茶です。
そのころに覚えた言葉が「八十八夜」でした。
歳時記にあるとおり、この日を目安に茶の葉の出具合をみて茶摘みをしていたのです。
(『NHK俳句 暦と暮す 語り継ぎたい季語と知恵』宇多喜代子 NHK出版 2020年)
 八十八夜は2月初めの立春から数えて八十八日目。
おおよそ5月2日ごろに当たります。
だいたい三日のちには立夏です。
まさしく「夏も近づく八十八夜」であり「野にも山にも若葉が茂る」の好季です。
この時季、安心していると思わぬ霜害におそわれることがあったのですが、そろそろそんな霜ともお別れだよを「八十八夜の別れ霜」で言い表し、種蒔(ま)きの目安としていました。
また「八十八夜の針の丈」ともいいます。
これは苗代の稲の丈が縫い針ほどに伸びてきましたという秋の豊作を期待することばです。
  熟睡(うまい)して八十八夜かゞやけり  相馬遷子(そうませんし)

 私たちの先祖は、こうして暦に二十四節気や雑節(ざつせつ)を暮らしの目安にしながら、自然界との連携を図ってきたのです。
いったん期限を損ねると雨も風も人力ではどうにもなりません。
雨よ、風よ、悪さをしないでおくれという祈る気持ちが雨乞いや風鎮めの祈禱(きとう)を生み、人々の心を繋(つな)いでいたのです。
昭和のくらし博物館」にある家具道具は昭和三十年代までのもの、小泉和子館長は「電気に頼らない、買わない、捨てない、始末のよいくらし」を昭和という時代の生活の核だといい、その暮らしの最後が昭和三十年代であったと言っておられる。
同感です。
これに加えて「思考は頭、作業は手、移動は脚」をつづけてきた千幾年かのながき時代の最後だともいえそうです。

  透明な傘の八十八夜かな  喜代子
(『NHK俳句 暦と暮す 語り継ぎたい季語と知恵』宇多喜代子 NHK出版 2020年)
(たけのこ)(たけのこ)竹の子たかんなたこうな>初夏 植物
竹の花竹咲く> 仲夏 植物

 筍の栄養価は高い。
炭水化物、糖分、食物繊維、脂肪、蛋白質、ビタミン、ミネラルなどを含み、とくにカリウムが多い。
 山城や京都西山の麓にモウソウチク(孟宗竹)の筍の産地があり、全国に出荷されえる。
活断層運動で隆起した山地から、沈降する盆地へ土砂が流出して扇状地を作る。
ずれの運動でできた崖に沿った岩盤は破砕されて崩れやすいので、モウソウチクを植えて補強した。
明治の陸地測量部の地図を見ると、竹林の列と活断層がみごとに対応しているのがわかる。
(『季語の科学』尾池和夫 淡交社 令和3年)
 地下茎は節(ふし)ごとに根と芽を備えている。
芽が出ると一日に数センチ、数日たつと時に1日1メートルほど伸びる。
つる性以外で最も成長が速いので、うっかり荷物を掛けておくと困ることになる。
地中で節が形成されていて、根に地い節から順に伸びる。
モウソウチクで節の数は60くらいで、同じ地下茎には同じ数の節がある。
 タケやササはイネ科の植物である。
皮が成長後、落ちるのをタケ、皮が脱落しないのをササと呼ぶ。
花は、めったに咲かないが、ササで50年、タケで100年に一度くらい花が咲く。
花はイネの花に似ている。
筍、つまりタケは、クローンで無性生殖である、
遺伝子に傷ができたりして、クローンの寿命がくると、開花して有性生殖となり、新しい竹林を作る。
 京都四条で京扇子の店の看板に目がとまる。
木目の美しい板に篆書(てんしょ)で「舞扇堂(まいせんどう」と書かれている。
店を出すとき書家の杭迫栢樹(くいせこはくじゅ)に揮毫(きごう)を頼んだという。杭迫は近代化とともに失われた暮らしの中の書を復活させようと提唱しており、街中にもっと書があってもいいという。

 竹の花乙訓滅ぶかも知れず  大石悦子

(『季語の科学』尾池和夫 淡交社 令和3年)
今朝の父の一枚です(^^)v
マガモがまだいるのかな?
カモ類は交雑が起きやすいそうです。

◎雑種の迷宮  カモ類
 カモたちの複雑な種事情


…前略…

 カモ類について言えば、彼らは鳥の中でも遺伝的に差が少ないことがわかっています。
というか、遺伝子だけでは種を識別できない場合さえあるという報告まであります。
 これはちょっと、驚くべきことです。
我々は「見た目にわからなくても、遺伝子は嘘をつかない」という例を見慣れています。
ですが、まさか逆があったとは。
もちろん遺伝子のどの部分を読むかにもよるので、すべての配列を読み切れば、それは一応わかるでしょう。
ですが、普通なら識別できる程度の検査をやっても種が識別できない場合があるということは、カモ類は見た目が違うだけで、中身は予想以上に近縁である、ということになります。
 これが、カモ類に野外でも雑種ができやすい理由の一つです。
雑種ができるがゆえにお互いの遺伝子が伝播(でんぱ)し、それが余計に種間の遺伝的な距離を縮めている……というのも理屈としてはあり得ますが、これをやるにはものすごい勢いで雑種を作らなければいけないので、ちょっと違うでしょう。
他の鳥よりは多いとはいえ、カモ類でも雑種はやはり、稀です。
「遺伝的にごく近いので、交雑すれば簡単に雑種もできちゃう」というほうだけを考えればよいでしょう。
(『鳥類学者の目のツケドコロ』松原始 ベレ出版 2018年)

ダーウィンが来た!「日本各地で起きる生きもの大集結の謎に迫る!
を見ていて、大変だなと思ったのはニホンザルとアカゲザルの交雑がおきているそうです。
アカゲザルとニホンザルが交雑することにより生じた生物」(環境省 日本の外来種対策)