2019年3月16日土曜日

雷雨の後…

今朝、出かけようとすると雷鳴と大雨…
諦めていると西の空が明るくなりました。
予報よりも早く天気になったなと思って出かけると黒い雲が
ころころ天気が変わった…
春の気象
 春の気象の特徴を最もよく表現した俳句に
冴え返り冴え返りつつ春半ば」(西山泊雲 はくうん)がある。
俳句歳時記では「冴え返る」は
「冱返(いてかえ)る」「しみ返る」「寒(かん)返る」「寒もどり」などの季語と並んでおり、
その意味は「春になっていったんゆるんだ寒さが、ふたたびきびしくなること」である。
何度か冴え返りながら、春は進んでくるのである。
(『四季の博物誌』荒垣秀雄編 朝日文庫 1988年)
暦の春は東洋の中国文化圏では立春(2月5日)から、
西洋では春分(3月21日)からであるが、
中緯度(温帯)の多くの国々における気候学上の慣用の季節区分では、
春は3、4、5月である。
日本をふくめて東アジアの、この期間の気象の最大の特徴は、
季節風が交代する、ということであろう。
つまり、冬の北西季節風が衰え、
夏の南東季節風の前段階の晩春・初夏の南風が吹き始めるまでが春なのである。
冬の北西季節風(シベリア風)が吹くときの気圧配置はよく知られている西高東低型である。
この気圧配置の平均出現日数を、過去の天気図から統計してみると、
10月(1日)、11月(3日)、
12月(16日)、1月(15日)、2月(14日)、
3月(9日)、4月(1日)、5月(1日)となっている。
すなわち、12、1、2月は西高東低型が月の半分を占めているが、
3月から急減している。
「北風の体制」は3月にくずれるのである。
しかし3月以後も、西高東低型は何回かは現れ、
つめたい冬の風を吹かせる。
それが「冴え返る」のである。
左の図(省略)は日本の三地点と北京の北西風と南東風の出現度(%)をグラフにしたものである。
各地とも3月か4月に季節風が交代している。
季節風の交代する春は、
北寄りの風と南寄りの風が日本付近で入り乱れ前線の活動も活発になる。
東京における顕著な前線の通過回数を、5年間の資料で、
月別にその回数を平均してみると春が最も多い(図を省略)
前線は、春雷、雹(ひょう)、砂あらし、たつまきなどを伴う。
春に天気が変わりやすく、気温の変動が大きいことも、
北風と南風の入り乱れによって説明できる。
春の天気は「降る、吹く、ドン」だと、東海地方ではいう。
北風と南風の衝突する前線上に低気圧が発生し、
それが通るときに雨が降る。
翌日は低気圧が発達しながら通りすぎ、青空の下を風が吹く。
多くは冴え返る北風である。
その翌日は、早くも移動性高気圧が通りすぎ、
薄雲が広がり次第に厚くなってドン(曇)になる
――春の天気の変わり身の速さをいい表したことわざといえる。
「涅槃西風(ねはんにし)」「彼岸西風(ひがんにし)」「春一番」
「桜まじ(サクラの花の咲くころの南風)」
「春疾風(はるはやて)」など春の強風をいい表す季語も多い。
冴え返る寒さは「春寒」「春寒し」などともいわれる。
サクラの花の咲くころなら「花冷え」、
5月なら「若葉寒(わかばざむ)」である。
春の寒さの戻りをいい表す言葉は外国にもある。
たとえばロシアでは「マハレブ桜冷え」「カシの若葉冷え」、
ポーランドでは「庭師の冬」。
そしてお隣の韓国では「コッセムチュウイ」と呼ぶという。
コッは花、セムはねたみ、チュイは寒さの意味である。
 春は東アジアの季節風が交代する季節である、と前に書いた。
季節風とは、冬と夏とでその風向きがほぼ逆転する一組の卓越風(たくえつふう)のことである。
その成因は、北極圏と熱帯、大陸と海洋、
北半球と南半球の熱的差違の季節変化によって説明されている。
季節風がよく発達するのは、アジア大陸の東岸と南岸である。
東岸は冬は北西季節風、夏は南東季節風、
南岸は冬は北東季節風、夏は南西季節風がよく吹く。
季節風は英語でモンスーン( monsoon )という。
これは季節を意味するアラビア語のマウシム( mausim )に由来し、
初めはアラビア海で冬半年に内陸から吹く北東風と
夏半年に海岸から吹く南西風に対して用いられていた。
インドや東南アジアなどの熱帯季節風帯では、
夏のモンスーンが米作りに必要な雨をもたらすので、
単にモンスーンといえば夏の季節風、
またはそのもたらす雨季を指し、
インドの季節はモンスーン(雨季、6~9月)を中心に、
プレ・モンスーン(雨季前、3、4~5月)、
ポスト・モンスーン(雨季後、10~11月)と、
冬(12~2月、3月)の四季に分けられる。
「北窓塞ぐ」(秋)、「北窓開く」(春)の季語を持つ日本も、
典型的な温帯季節風帯に位置している。
  (倉嶋 厚)
(『四季の博物誌』荒垣秀雄編 朝日文庫 1988年)