2026年6月28日日曜日

不安定な天気

           
こちらの方は被害がなく台風が通り過ぎたけど
豪雨の被害が出ていますし、地震も発生している地域は大変です。
津波の心配はないそうですが、
地盤が緩んでいると山の津波(土砂崩れ)の危険がある。

朝、雨がなかなか止まなかったのですが、曇り空になったので出かけました。
今朝、父の歯が抜けてしまいました。
明日、歯科に電話をして予約をしようと思っています。
この頃、私、父、妹の通院でリハビリ散歩を休む日が多くなっています。
来週も通院が続くので少しでも歩こうとやってきました。

この子は煙管(きせる)のような殻を背負っているのでキセルガイの仲間なのですが…
筑波大キャンパスのカタツムリ」(pdf)
歌手で俳優の美輪明宏さん死去「ヨイトマケの唄」など知られる〟(NHK)

美輪明宏」(公式サイト)に掲載された「生前の美輪明宏から直筆のメッセージ

日本も核武装するべきだと主張する政党や人たちが湧いてきている現在の日本、

被爆者の口に注いだ末期の水 美輪明宏さん」(NHKアーカイブス)

美輪明宏さんの言葉を転記したいと思います。
 交響曲第二番〝地獄〟

 静かな夏休みの朝、今日は雲一つない好い天気。
涼しい朝の冷気がどこかへ消えて、そろそろ暑い日射しに変わります。
 お母ちゃんが死んで、弟達はお手伝いさんと田手原(たでわら)に疎開して、お父ちゃんは朝から浦上(うらがみ)の方へ集金。
家の中では、お兄ちゃんが階下で遊んでいて、二階で、もう一人のお手伝いさんが、お布団の手入れ。
 僕は何かガランと冷え冷えした空気が嫌で気を変えるため宿題の絵を画(か)きます。
 真夏だというのに、非常態勢だからと、防空頭巾(ずきん)を背中にかけ、肩からは薬や細々(こまごま)した物を入れた袋を提げ、朝、起きたときから寝る時まで、この頃(ごろ)は一日中この格好。
(『紫の履歴書―新装版―』美輪明宏 水書房 2007年)
 一面ガラス戸の縁側に置いた机の前に僕は腰かけ、万寿(まんじゅ)姫の絵を画いて、その出来上がりを確かめるため椅子(いす)をずらして立ち上がり、後ろへ二、三歩下がった途端、
 ぴかっ
 マグネシュウムを焚(た)いたような白い光が、窓の外を、一瞬、写真の陰画と陽画が逆さまになった世界に変えました。
 世の中がシーンとして、
 (あれ? こんな好い天気に雷光<いなびかり>なん……)
 思う間もなく、
 (!!…………)
 幾千万の雷が一時に落ちたよりも凄(すさ)まじい音響で世界中が轟(とどろ)き揺れ動きました。
慌ただしい空襲警報が警戒警報を一足飛びに越して鳴り出し、爆音が逃げて行きます。
 「しんごちゃん、こっちへ!」
 足の不自由なお手伝いの清ちゃんが、もうもうと立ちこめる塵煙(じんえん)の中で、布団を被せようと僕の手を引きました。
 「また来るかもしれん! 逃げよう!」
 僕は清ちゃんと一緒に傾いた二階を駈け降り爆風で机の下に転がされたお兄ちゃんを、清ちゃんが起こし、三人で外へ逃げました。
 表……そこは地獄だったのです。
 荷台の前で、ドサリと横になって死んでいる馬の傍で、馬方らしい人間が、ぴんぴん飛び上がっています。
丸裸で全身が紫とも赤ともつかぬ火ぶくれで獣のような声をあげています。
 僕は声も立てず走り出そうとした瞬間、
 「助けてくれえ!」
 と、ひしゃげた声がして何かに押しつぶされた男か女かわからない人間が頭と手を差し出し、僕の手をつかんだのです。
 「ギャー」
 僕は夢中でその手を振り払ったら、その人の手や腕の肉が、ずるりと抜けて飛び、その肉の余りが、僕の手首についています。
僕は気違いのように、それをもう片方の手で、そぎ落とし、水に溺(おぼ)れる瞬間のような鼓動と思いで走ります。
 阿鼻叫喚(あびきょうかん)の交響楽がシンバルやティンパニーの乱打と共に、何十万の悲鳴の混声合唱(コーラス)を叫び、この世の果てまで届くよう助けを求めて哭(な)いています。
狂暴な死に神が衣をひらめかせながら、眷属(けんぞく)を率いて、空一杯に広がり、地獄の中を大声で笑い躍り、荒れ狂っています。
 女子挺身隊(ていしんたい)らしい若い女の子が何か大きな塀のようなものの下敷になった友達を、一生懸命引っ張り出そうとしています。
その目は気違いのようです。
引っ張られている女の子は、やっと胸から上をもたげて、
 「うちはよか。あんた逃げて頂戴(ちょうだい)。うちのために、あんたば死なせとうなか。うちのこと放(ほ)ったらかして、早う逃げて、うちはよかけん、早う早う……幸福にね、さようなら、さようなら」
 口の端から血を出しながら、目をつむりそうになって、やっと言います。
 「バカッ、何ば言うとね! しっかりせんばいかん。あんたば放っていかるるもんですか!」
 そう言いながら手を引いている女の人の髪に火がつき始めました。
そこへ消防団の人が二人、走って来て、女の人の髪の火を防空頭巾で、はたいて消し、女の人を連れて行こうとしました。
女の人は、両方からずるずる引きずられながら、
 「うちは、よかですけん、あの人ば助けて下さい。お願いします。お願いですけん! あの人ば捨てて行かれんとです!」
 大声で暴れながら手を振りほどいて逃げ帰ろうとするのを男の人は無理矢理連れて行きます。
押し潰(つぶ)されている女の人は、安心したように目をつぶりました。
何か微笑(わら)っているようでした。
僕は何故かわからない感動で胸が一杯でした。
 はっと思い出して、また走り出し、やっと船大工町(ふなだいくまち)の上にある防空壕(ぼうくうごう)に逃げ込みました。
 防空壕の中も傷ついた女子供の泣き声で充満していました。
どんどんいろんな人が担ぎ込まれてきます。
ひときわ大きな声が聞こえました。
 「やめて頂戴、お願い、お願い」
 やはり先刻(さっき)の女学生と同じ挺身隊の近所のお姉さんが潰れて血だらけの足を引きずりながら、這(は)うようにして外へ出ようとするのを、お母さんが腰にしがみついて止めようとしているのです。
 「いいえ、お母さん離してえ、あの人ば、あのまま殺してなるもんですか、あの人が死んだら、うちも一緒に死ぬとよ!」
 お姉さんは、そう叫び返すと、踠(もが)きながら外へ出ようとします。
きっと下宿している医学生の恋人のところへ行こうとしているのでしょう。
医大の方は全滅だと誰かに聞いたらしいのです。
入口あたりの人が二、三人で暴れるお姉さんを抱えて奥へ連れ戻しました。

 …つづく…

(『紫の履歴書―新装版―』美輪明宏 水書房 2007年)

正直、転記するのは辛いです。
でも、美輪明宏さんが書き残した思いを胸に留めたいと思います。