2022年12月19日月曜日

冷たい風

できるだけ日向を歩いていましたが、それでも風が冷たかった…

近畿 今季一番の冷え込み 北部は雪 交通影響など注意」(関西NHK)
12月16日の朝日新聞に福井市味見河内(あじみこうち)町の焼き畑の記事が載っていました。(WEB版では12月10日
動画を見ると焼き畑のようすがわかります。
古来の焼き畑農法で作る、在来野菜「河内カブラ」〟(YouTube)
日本でも焼き畑は一時期は環境破壊の元凶のように誤解されていたそうです。
焼き畑をする前にユロック族のマーゴ・ロビンズさんたちのように神に祈り、上の方から焼いていました。
(NHKスペシャル「ワイルドファイア ~人類vs.森林火災~」)

祈り育て再生する焼き畑の集落

…前略…

 今年の火入れは8月11日。
斜面の上端から火を付け、下方へ焼き進めていく。
火を付ける前には酒と塩を山の神に捧げ、「ムシの皆さん、ヘビやカエルの皆さん、ケダモノの皆さん。いまから上側より火を付けますので、無事に逃れてください」と、地元の人にならって祈禱(きとう)の言葉を唱える。
…後略
2022年12月16日 朝日新聞
3章 日本人は自然をどのように利用したか
 1 焼畑から野焼きまで


…前略…

 焼畑には何かすぐれた点があるのでしょうか。
佐々木高明氏は、具体的な火入れの効用を4点あげています。
 第一は、森林を切りたおし原野を刈り払ってのち、火をつけて燃やしてしまうのがもっともかんたんな開墾(かいこん)の手段であること。
 第二は、古くから通説となっているのですが、火によって生じる灰が植物の成長を促進する肥料としてはたらくこと。
 第三は、焼土効果によって、植物が利用可能となる窒素(ちっそ)やカリが増えること。
 第四は、地表や表土中にある雑草の芽やタネをかなり死滅させ、雑草発生を抑制すること。
(『日本らしい自然と多様性――身近な環境から考える』根本正之 岩波ジュニア新書 2010年)
 東北タイの焼畑農業を生態学的視点から総合的に調査した京都大学の久馬一剛(ひさまかずたけ)先生らや、宮城県で発生した大規模な山火事を対象にした東北大学の飯泉茂(いいいずみしげる)先生らの研究を加え、焼畑の効用についてもう少しくわしくみてみましょう。
 木や草を燃やしてしまうのだから、手軽に整地できるので、第一の効用はまちがいないでしょう。
 樹木や草をつくりあげていた有機物が灰になり、それが土壌コロイドに吸着(きゅうちゃく)されれば、植物が直接吸収できる無機態のリンやカリができるのですから、第二の施肥(せひ)効果は期待できます。
しかし、窒素は大部分が気体にとなって空気中に逃げてしまうので、養分として有効にはたらきません。
また、斜面に蓄積したリンやカリを含んだ灰は、雨によってかんたんに流されるという性質があります。
焼いた直後に作物のタネをまいたとしても、それが地表面をおおうまでは、降雨によって灰や表土がひじょうに侵食されやすくなります。
灰の効果は、焼いてあまり時間が経過していないときに強い降雨にみまわれると、ほとんど失われるでしょう。
 伐採した木を焼くと、地表の温度が一時500度にも上昇するので、高温の影響で土壌有機物中の窒素の一部が植物の利用できるアンモニア態窒素 (NH4+)となって遊離(ゆうり)する「焼土(しょうど)効果」がはたらけば、第三の効用が期待できるでしょう。
 第四の除草効果はどうでしょうか。
焼畑初期の雑草群落は、火入れ後に発生する植物がどこから供給されるかによって、また先に発生した植物種の生態的特性や火を入れた場所の微細な土地条件によって大きく変わるので、火入れによる除草効果はどこも同じようには評価できないでしょう。
 友人の中越信和(なかごしのぶかず)広島大学教授は、山火事跡地に再生してくる植物の生き方を、侵入してくるタネによる再生戦略(Dタイプ)、生き残っていた埋土種子(まいどしゅし)による再生戦略(Bタイプ)、そして生き残った地下部による再生戦略(Cタイプ)の三つの基本型と、それらの混合型とに分けて考察しました。
 東北タイの焼畑では、Dタイプの風でタネが運ばれてくるベニバナボロギクやヒヨドリバナの仲間の発生が顕著でした。
宮城県の山火事跡地でも、1年めは栄養的に再生したものに混じってオオネバリタデ、ツユクサなどのBタイプと、Dタイプのヤマニガナ、ダンドボロギクなど侵入種子から発生するものが見られました。
一方、瀬戸内の芸南地方の山火事跡では、ほとんどが萌芽(ほうが)から再生してくるCタイプであったといいます。
 芸南地方では侵入してくるタネが少なかったこともあるでしょうが、花崗岩が風化してできたマサ土できわめて貧栄養な場所だったので、侵入してきた個体が十分に育たなかったようです。
他方、東北タイや宮城県の事例は比較的土壌が肥沃(ひよく)で、土壌表層の湿度も発芽に適していた場所だったようです。
 焼畑で作物を栽培している期間に発生する雑草の様相は、その長さ、除草の有無、作付けする作物の種類によって変化します。
そして栽培を放棄したあとの雑草群落の移りかわりは、放棄時点、どんな植物が生えていたかによって大きく変化します。
 火入れは植物ばかりでなく、動物にも影響を与えます。
樹木が焼失すると、開けた場所に生えてくる植物を好む鳥類が跡地に集まり、まわりから鳥類によってタネが運ばれます。
昆虫類や土壌動物相にも変化が見られます。
たとえば、ススキ草地で火入れをすると、節足(せっそく)動物相が壊滅的な影響を受けます。
また、火入れの直接の影響ではありませんが、食物が少なくなることでミミズ、イシムカデ、鞘翅(しょうし)類などがいちじるしく減少するといいます。
 私たちの祖先は、つぎの項でお話しする家畜の放牧を容易にするための手段としても、火を使いました。
701年に制定された大宝律令(たいほうりつりょう)中の廐牧令(くもくりょう)の第11条には、
 「凡牧地、恒以正月以後、縦一面以次漸焼。至草生使遍。其郷土異宜、及不須焼処、不用此令」
(毎年春に火入れをして枯草を焼き、草生を万遍ならしめよ。ただし、ところによっては火入れの時期に遅速があるし、また<火入れすることが>危険なところではこの令は適用しない)(岩波悠紀<ゆうき>訳)
と記されています。
このような火入れは野焼きといわれ、当時おこなわれていたほとんど唯一の草地管理技術でした。
けれども、野焼きがまわりの山林に延焼することもしばしばで、山林保護上、禁止令が出ることが多かったのです。
 ススキやチガヤなどの在来の草本類は家畜の飼料ばかりでなく、茅葺(かやぶ)き屋根の材料とか施肥や緑肥という肥料源として欠くことのできない資源だったので、1960年以前はそのような草を確保するための野焼きが日本中でかなり広くおこなわれていました。
したがって、いまでも全国各地の草原に野焼きの風習が残っており、津田智氏の「野焼きマップ」(2009年6月、図3・2<省略>)によれば、北海道の小清水原生花園(こしみずげんせいかえん)から宮崎県の都井(とい)岬まで54ヵ所で野焼き(図3・3<省略>)がおこなわれています。
ただし、近年の野焼きには昔からの生業(せいぎょう)と結びついたものだけでなく、伝統的な景観を維持したり、生物の多様性の確保を目的にするものも含まれます。
 草地の野焼きには焼畑と共通の目的もありますが、焼畑の場合は生えてくる雑草をおさえる必要があるのに対し、野焼きではなんとかしていい草を生やすことが目的になります。
草地の火入れには①~⑤のような期待がこめられています。
 ①草の萌芽を促し、草の生産量を増す。
 ②家畜の好むやわらかい良質の草をつくる。
 ③立枯れ状態の草を焼き払って、家畜が新しい草を食べやすくする。
 ④灌木(かんぼく)や棘(とげ)のあるもの、あるいは有毒植物を除去する。
 ⑤焼かれた植物体の地上部が灰分となって、草地土壌に還元される。
 ①と②は家畜にいい餌を与えるためであり、③と④はいい草の成長を妨げる雑灌木の除去効果を期待しています。
⑤の灰分が家畜の好む草の養分になれば申し分ありません。
焼畑はふつう、相当な斜面地でおこなわれますが、草地はそれほどではないので、灰分が流失する危険性は小さいといえるでしょう。
 かりに野焼きせず、草刈りだけで草原を管理すると、機械力の発達している現代ではそれも可能ですが、コナラ、ミズナラ、イタヤカエデ、タニウツギ、テリハイノバラ、サルナシなどの木本類が目立ってきて、草原生態系として不安定な状態になります。
野焼きで木本類が残りにくいのは、火による温度上昇と深い関係があるようです。
 野焼きのさいの温度上昇がしめす垂直分布は、枯れ草がどのていどたまっているかや、野焼きのときの風向によっていくぶん変化しますが、最高温度はふつう地上約2~10センチの高さにあらわれます。
 岩波悠紀博士の実験によれば、温度は、枯れ草の量が1平方メートルあたり500グラムまでは、燃料の量が増加するほど高まります。
ススキやササ型の草地では、いずれも最高温度が400~800度になります。
しかし、500グラムを境に最高温度は横ばい状態をしめしました(図3・4<省略>)。
一方、高温がつづく時間は、燃える燃料の増加に比例して長くなります。
 ところで、地表面の温度はどれくらい上昇するのでしょうか。
シバ草原が10~80度、ススキ草原が30~170度、ササ草原は5~45度になるといわれています。
ササ草原の値がいくぶん低いのは、堆積している腐植層(ふしょくそう)に断熱効果があるためだと考えられています。
このように、地表面から上部10センチぐらいまでの層はかなり温度が上昇するのですが、地温はほとんど上昇しません。
地表下2センチほではせいぜい数度上昇するくらいです。
 したがって、冬季に野焼きをおこなえば、成長点や休眠芽(きゅうみんが)が地上にある高木や低木類は火の影響を受けても、草原の主役であるイネ科植物は成長点が地下にあるので、ほとんど傷害を受けないのです。
このようにして、5月初旬までの野焼きではほとんど影響をうけないススキでも、成長点がだいぶ上昇した5月中旬以降に火が入れば成長点は枯死するので、新たに地面近くで分蘖(ぶんけつ<根に近い茎の関節から枝分かれすること>)を発生しないかぎり再成長は不可能です。
(『日本らしい自然と多様性――身近な環境から考える』根本正之 岩波ジュニア新書 2010年)

焼畑稲作」(小学3~6年)

九州山地 椎葉の信仰 山の神の懐で」(みちしる 1995年)

阿蘇 野焼き 大草原を守り、育む」(みちしる 2013年)

日本全国野焼きマップ (2013年2月版)」(津田研究所 岐阜大学)
今朝の父の一枚です(^^)/

 自分で自分にケンカを売っている鳥

 自然と人の間に起こるいざこざの一つに、野鳥のフンの問題があります。
車を持っている人は、車のサイドミラー付近が鳥のフンまみれになって、怒りにまみれたことがあるかもしれません。
それはセキレイ類やジョウビタキなどによるものがですが、彼らは別に人に嫌がらせをしているつもりはありません。
 これらの鳥類はなわばり意識が強く、侵入してきたものを追い出そうとしますが、車のサイドミラーやカーブミラー、窓ガラスなどに映った自分自身をも敵だと勘違いして攻撃していまいます。
自分自身と争っているうちに、ミラー周辺をフンまみれにしてしまうのです。
鳥たちは、ただ自分のなわばりを守ろうと必死なだけなのですが……
 鏡面に映った自分を認識できることを、「鏡像認知」といいます。
イソップ物語では、イヌが池に映った自分自身を認識できなくて痛い目に合ってしまいますが、あれも鏡像認知ができていない例といえます。
なお野鳥だと、ハトやカササギは鏡像認知ができるそうです。
 近くにジョウビタキやハクセキレイがいたら、駐車中の車のサイドミラーはたたんでおいた方がよいかもしれません。
(『身近な「鳥」の生きざま事典』一日一種著 SBクリエイティブ 2021年)