巻第七(譬喩歌) 1358
はしきやし我家(わぎへ)の毛桃(けもも)本(もと)繁み花のみ咲きて成らざらめやまも
かわいい我が家の毛桃は枝が茂っているから,花だけ咲いて実らないことなどあるものか。
▽「毛桃」は,桃の実の表面に薄く毛が生えている野桃の一種。
「本繁み」は,根元近くから出た小枝が多いこと。
桃が実るのは結婚できることの譬え。
(『万葉集(二)』佐竹昭広他校注 岩波文庫 2013年)
3月17日の記事で
ホトケノザがコオニタビラコから
「ほとけのざ」の座を見事に奪い取ってしまったと紹介しましたが(*^ー゜)
そのホトケノザの地位を危うくさせているのが
ヒメオドリコソウ
昔は同じシソ科のホトケノザがよく生えていたような場所で,
今や取り替わるようにように,あるいは競合して生えている帰化植物。
雰囲気もよく似ていて,ホトケノザとの雑種ではないかと思われるものも見つかる。
見分け方としては,ヒメオドリコソウは花序(かじょ(花を付けた枝))に付く
苞葉(ほうよう)がホトケノザより大きめで,
紫色を帯びてやや汚れた感じがすることが多い。
またヒメオドリコソウは,葉や苞葉の大きさが,
茎の上に行くことにしたがい次第に小さくなって,
全体として三角錐状の姿になるが,ホトケノザは節間が長く伸び,
苞葉の大きさもほぼ一定なので,細い円柱状に見える。
いったん見慣れれば,遠くからでも雰囲気の違いから一目瞭然だろう。
どちらの種類も種子はごく小さく,隙間に入るにはうってつけの大きさだ。
欧州原産。シソ科。
(『スキマの植物図鑑』塚谷裕一 中公新書 2014年)
日射しは春だなと思えるほど暖かいのですが…
ハナズオウ
―枝一面に赤い小花(マメ科)
彼岸を過ぎたころから,枝一面に赤い小花をびっしりとつけ,
けぶるような小糠雨に蘇芳(すおう)色(黒みを帯びた紅色)を輝かしている情景は,
何ともいえない美しさである。
この色の美しさは,清少納言の『枕草子』に
「……かうのうすものの二藍(ふたあゐ)の御直衣(なほし),
二藍の織物の指貫(さしぬき),濃蘇枋(こすはう)の御袴に……」と,
ほめことばをそえている。
二藍とはベニバナとツユクサの中間色,スオウは,万葉,平安時代に,
インドやマレー方面から紅色の染色材料として輸入していた植物であったらしい。
元禄年間(1688ー1704年)になって,
中国からこの植物が庭木として輸入されると,富豪や貴族の屋敷に好んで植えられ,
その花の色をめでたものである。
日本に裁植されてから300年の歳月を経たせいか,
すっかり定着し,古代色を今に伝え,燃えたつ春を演出している。
「住む人の心見ゆるや花蘇芳」(長翠)
(『ひょうご花の散歩』岡本高一 のじぎく文庫 1993年)
花のひま風をはらめるとほき穹(そら)
(『夏みかん酢つぱしいまさら純潔など 句集「春雷」「指環」』鈴木しづ子著 河出書房新社 2009年)
アオジ♂が真剣な眼で…
「ぬぬ…」朝ご飯を見つけたのかな(*^▽^*)
蕨(わらび)・つくづくし,をかしき籠(こ)に入れて,
阿闍梨文「これは,童(わらは)べの供養(くやう)じて侍る初穂(はつほ)なり」
とて,〔中君に〕たてまつれり。
(『源氏物語(五)』紫式部、校注:山岸徳平 岩波文庫 1966年)
蕨やつくしを風情のある籠(かご)に入れて,
「これは,童(わらわ)たちが仏に献じました初穂です」と言って差し上げます。
(『源氏物語 第5巻 御法~早蕨』大塚ひかり翻訳 ちくま文庫 2009年)
今日は,会いたかったなと思っていました(^_-)
ジョウビタキ♂は渡り鳥なので研究が難しいだろうな…
ヒヨドリがベニバスモモの花を食べていた…
ハシボソガラスが水を飲んでいたのですが
白目をむいている…ではなくて,
眼球を保護しているまぶたはふつう上下のまぶただけですが,
鳥には三番目のまぶたがあります。
この三番目のまぶたは〝瞬膜(しゅんまく)〟とよばれて
人間の眼では内側のすみに痕跡として残っています。
(『鳥についての300の質問』A&H・クリュックシァンク著
青柳昌宏訳 講談社ブルバックス 昭和57年)
今度は,桜の蕾を食べている…
この時期の寒さを「花冷え」ともいいますが
風が冷たくて冬のようでした…
ソメイヨシノは江戸時代末期に染井村(現在の東京都豊島区駒込)の
植木屋が売り出したと伝えられているそうです。
ですから西行などの和歌に詠われている桜は山桜などになります。
山家集 上 春 60
空に出でて いづくともなく 尋ぬれば 雲とは花の 見ゆるなりけり
どこというあてもなく桜を求めたずねると,
遠くから雲のように見えたのは,
実は咲き始めた桜が白雲のかかったように見えたのだったよ。
(『山家集』西行、後藤重郎校注 新潮社 1982年)
いつも田んぼの中を見ているのですが…
なずな[薺]
古くから食用にされ,春の七草の一つにあげられている。
子供たちには,ペンペングサのほうが通りがよいかもしれない。
あぜ道,畑の縁から都会の空地,荒れ地,庭の隅まで、
どこにでも見られるアブラナ科の越年草だ。
秋に種から発芽し、根元から切れ込みの多いへら状の細長い葉を,
タンポポのように放射状に広げる。
地面にぴったり張りついている姿は,なかなか可愛らしい。
ナズナは「撫菜」,すなわち愛(め)でる菜の意味で,
この時期の愛らしさからの表現だといわれる。
清少納言も『枕草子』の中で
「草は――なずな。苗。浅茅(あさじ),いとをかし」と記している。
ロゼットと呼ばれる放射状のスタイルで,寒さを避けて冬を越す。
春,茎をぐんぐん伸ばし,その頂に小さな白い十字花を房のようにつける。
花は下から上へと順々に咲き上がる。
新しく生えてきた葉は,切れ込みが浅い。
平べったい三角形の小さな果実を結ぶ。
この実が三味線のバチそっくりなので,ペンペングサの名がついた。
子供たちは,ペンペングサを採り,手で振って遊ぶ。
「カチッ,カチッ」とかすかな音がするのがおもしろいらしい。
ネコノピンピン,チンチロリン,チャンチャンコなどの楽しげな名も持っている。
冬から早春にかけてロゼットを摘み,そのまま塩漬けにするか,
そっとゆでて,ごまあえ,卵とじ,汁の実,おひたしに。
またゆでて刻み,うすい塩に酒を加えて炊き上げたご飯にのせ,
蒸れたらかき回して食べる。
彩りが美しいうえに軽い苦みがさわやかで,春の息吹を感じる。
アクやクセはほとんどない。
花もしごくようにして摘み,ゆでておひたしなどにするとよい。
かゆに炊き込む調理法も知られている。
古来,正月のかゆに春の七草を炊き込んでいるが,
ほかの野草がなくてもナズナだけは欠かせない,
という人が多いのは,風味のすばらしさの証明かもしれない。
この風味は,ペンペングサの認識からちょっと想像できかねる。
一とせに一度つまるゝ薺かな 芭蕉
正月の七草がゆに,普段あまりかえりみられないナズナが,
にわかに注目されて用いられるさまを詠んだ句だろう。
芭蕉は,この草に愛着を覚えていたらしく,
ナズナを題材にした句をほかにもいくつか残している。
(『摘み草入門』福島誠一 女子栄養大学出版部 昭和55年)
午後から記事のネタの仕入れに(*^ー゜)
図書室に出かけると「ブラタモリ ロケの心得三カ条」でありませんが
いつものようにキョロキョロ,上や下を見て歩いていると
(怪しい人間だと思われないように注意していますが)
ノジスミレ スミレ科
日当たりのよい道端や田の土手などに生えます。
私の印象では,1,2年前に裸地になったばかりの,草もまだない砂っぽい場所に,
他の草に先駆けて最初に乗り込んで花を咲かせています。
よほど日当たりのよ場所が好きなのでしょう。
全体に細かいビロード状の毛がたくさん生えているのですが,
その毛にたくさん砂がついて,いつもうす汚れたように見えます。
また,葉もよれよれして,どこかだらしない感じもします。
そんなふうに見えるスミレの仲間は他にいないので,
それもまたこの種の特徴の一つになるのでしょう。
どこか優等生っぽいスミレより,
くだけた感じのノジスミレの方が好き,という人も多いのです。
(『花のおもしろフィールド図鑑(春)』ピッキオ編著 実業之日本社 2001年)
ホトケノザがコオニタビラコから
「ほとけのざ」の座を見事に奪い取ってしまったと紹介しましたが(*^ー゜)
そのホトケノザの地位を危うくさせているのが
ヒメオドリコソウ
昔は同じシソ科のホトケノザがよく生えていたような場所で,
今や取り替わるようにように,あるいは競合して生えている帰化植物。
雰囲気もよく似ていて,ホトケノザとの雑種ではないかと思われるものも見つかる。
見分け方としては,ヒメオドリコソウは花序(かじょ(花を付けた枝))に付く
苞葉(ほうよう)がホトケノザより大きめで,
紫色を帯びてやや汚れた感じがすることが多い。
またヒメオドリコソウは,葉や苞葉の大きさが,
茎の上に行くことにしたがい次第に小さくなって,
全体として三角錐状の姿になるが,ホトケノザは節間が長く伸び,
苞葉の大きさもほぼ一定なので,細い円柱状に見える。
いったん見慣れれば,遠くからでも雰囲気の違いから一目瞭然だろう。
どちらの種類も種子はごく小さく,隙間に入るにはうってつけの大きさだ。
欧州原産。シソ科。
(『スキマの植物図鑑』塚谷裕一 中公新書 2014年)
日射しは春だなと思えるほど暖かいのですが…
ハナズオウ
―枝一面に赤い小花(マメ科)
彼岸を過ぎたころから,枝一面に赤い小花をびっしりとつけ,
けぶるような小糠雨に蘇芳(すおう)色(黒みを帯びた紅色)を輝かしている情景は,
何ともいえない美しさである。
この色の美しさは,清少納言の『枕草子』に
「……かうのうすものの二藍(ふたあゐ)の御直衣(なほし),
二藍の織物の指貫(さしぬき),濃蘇枋(こすはう)の御袴に……」と,
ほめことばをそえている。
二藍とはベニバナとツユクサの中間色,スオウは,万葉,平安時代に,
インドやマレー方面から紅色の染色材料として輸入していた植物であったらしい。
元禄年間(1688ー1704年)になって,
中国からこの植物が庭木として輸入されると,富豪や貴族の屋敷に好んで植えられ,
その花の色をめでたものである。
日本に裁植されてから300年の歳月を経たせいか,
すっかり定着し,古代色を今に伝え,燃えたつ春を演出している。
「住む人の心見ゆるや花蘇芳」(長翠)
(『ひょうご花の散歩』岡本高一 のじぎく文庫 1993年)
花のひま風をはらめるとほき穹(そら)
(『夏みかん酢つぱしいまさら純潔など 句集「春雷」「指環」』鈴木しづ子著 河出書房新社 2009年)
アオジ♂が真剣な眼で…
「ぬぬ…」朝ご飯を見つけたのかな(*^▽^*)
蕨(わらび)・つくづくし,をかしき籠(こ)に入れて,
阿闍梨文「これは,童(わらは)べの供養(くやう)じて侍る初穂(はつほ)なり」
とて,〔中君に〕たてまつれり。
(『源氏物語(五)』紫式部、校注:山岸徳平 岩波文庫 1966年)
蕨やつくしを風情のある籠(かご)に入れて,
「これは,童(わらわ)たちが仏に献じました初穂です」と言って差し上げます。
(『源氏物語 第5巻 御法~早蕨』大塚ひかり翻訳 ちくま文庫 2009年)
今日は,会いたかったなと思っていました(^_-)
シジュウカラ♀
シジュウカラ♂
ジョウビタキ♂は渡り鳥なので研究が難しいだろうな…
ヒヨドリがベニバスモモの花を食べていた…
ハシボソガラスが水を飲んでいたのですが
白目をむいている…ではなくて,
眼球を保護しているまぶたはふつう上下のまぶただけですが,
鳥には三番目のまぶたがあります。
この三番目のまぶたは〝瞬膜(しゅんまく)〟とよばれて
人間の眼では内側のすみに痕跡として残っています。
(『鳥についての300の質問』A&H・クリュックシァンク著
青柳昌宏訳 講談社ブルバックス 昭和57年)
今度は,朴の蕾をかじっていました…
モミジバフウ
シダレザクラも(*^-^*)今度は,桜の蕾を食べている…
この時期の寒さを「花冷え」ともいいますが
風が冷たくて冬のようでした…
ソメイヨシノは江戸時代末期に染井村(現在の東京都豊島区駒込)の
植木屋が売り出したと伝えられているそうです。
ですから西行などの和歌に詠われている桜は山桜などになります。
山家集 上 春 60
空に出でて いづくともなく 尋ぬれば 雲とは花の 見ゆるなりけり
どこというあてもなく桜を求めたずねると,
遠くから雲のように見えたのは,
実は咲き始めた桜が白雲のかかったように見えたのだったよ。
(『山家集』西行、後藤重郎校注 新潮社 1982年)
いつも田んぼの中を見ているのですが…
なずな[薺]
古くから食用にされ,春の七草の一つにあげられている。
子供たちには,ペンペングサのほうが通りがよいかもしれない。
あぜ道,畑の縁から都会の空地,荒れ地,庭の隅まで、
どこにでも見られるアブラナ科の越年草だ。
秋に種から発芽し、根元から切れ込みの多いへら状の細長い葉を,
タンポポのように放射状に広げる。
地面にぴったり張りついている姿は,なかなか可愛らしい。
ナズナは「撫菜」,すなわち愛(め)でる菜の意味で,
この時期の愛らしさからの表現だといわれる。
清少納言も『枕草子』の中で
「草は――なずな。苗。浅茅(あさじ),いとをかし」と記している。
ロゼットと呼ばれる放射状のスタイルで,寒さを避けて冬を越す。
春,茎をぐんぐん伸ばし,その頂に小さな白い十字花を房のようにつける。
花は下から上へと順々に咲き上がる。
新しく生えてきた葉は,切れ込みが浅い。
平べったい三角形の小さな果実を結ぶ。
この実が三味線のバチそっくりなので,ペンペングサの名がついた。
子供たちは,ペンペングサを採り,手で振って遊ぶ。
「カチッ,カチッ」とかすかな音がするのがおもしろいらしい。
ネコノピンピン,チンチロリン,チャンチャンコなどの楽しげな名も持っている。
冬から早春にかけてロゼットを摘み,そのまま塩漬けにするか,
そっとゆでて,ごまあえ,卵とじ,汁の実,おひたしに。
またゆでて刻み,うすい塩に酒を加えて炊き上げたご飯にのせ,
蒸れたらかき回して食べる。
彩りが美しいうえに軽い苦みがさわやかで,春の息吹を感じる。
アクやクセはほとんどない。
花もしごくようにして摘み,ゆでておひたしなどにするとよい。
かゆに炊き込む調理法も知られている。
古来,正月のかゆに春の七草を炊き込んでいるが,
ほかの野草がなくてもナズナだけは欠かせない,
という人が多いのは,風味のすばらしさの証明かもしれない。
この風味は,ペンペングサの認識からちょっと想像できかねる。
一とせに一度つまるゝ薺かな 芭蕉
正月の七草がゆに,普段あまりかえりみられないナズナが,
にわかに注目されて用いられるさまを詠んだ句だろう。
芭蕉は,この草に愛着を覚えていたらしく,
ナズナを題材にした句をほかにもいくつか残している。
(『摘み草入門』福島誠一 女子栄養大学出版部 昭和55年)
午後から記事のネタの仕入れに(*^ー゜)
図書室に出かけると「ブラタモリ ロケの心得三カ条」でありませんが
いつものようにキョロキョロ,上や下を見て歩いていると
(怪しい人間だと思われないように注意していますが)
ノジスミレ スミレ科
日当たりのよい道端や田の土手などに生えます。
私の印象では,1,2年前に裸地になったばかりの,草もまだない砂っぽい場所に,
他の草に先駆けて最初に乗り込んで花を咲かせています。
よほど日当たりのよ場所が好きなのでしょう。
全体に細かいビロード状の毛がたくさん生えているのですが,
その毛にたくさん砂がついて,いつもうす汚れたように見えます。
また,葉もよれよれして,どこかだらしない感じもします。
そんなふうに見えるスミレの仲間は他にいないので,
それもまたこの種の特徴の一つになるのでしょう。
どこか優等生っぽいスミレより,
くだけた感じのノジスミレの方が好き,という人も多いのです。
(『花のおもしろフィールド図鑑(春)』ピッキオ編著 実業之日本社 2001年)