2023年6月19日月曜日

日ざしは強かったけど

今朝は、晴れて日ざしがきつかったです。
でも、時折り風が吹いてくれたので
木陰を歩くとホッとしました。
昨日通らなかった道を歩くと咲いていました。
萎れた花がついていたので、昨日、咲いたんだ

食用や漢方薬にも使われる
 ヤブカンゾウ・ノカンゾウ
(藪萱草・野萱草)

 ワスレグサ科 多年草 (花)7~8月
どちらも人里近くの川辺や野原にはえ、夏に美しいオレンジ色の花を咲かせる。
花が咲くまでは見分けがつきにくいが、開花するとヤブカンゾウは八重咲きで、ノカンゾウは一重咲き。
どちらも一日花で、その日のうちにしぼむ。
ともに春の若芽は食用。
(『趣味どきっ! 道草さんぽ・春』多田多恵子 NHK出版 2023年)
 「禁酒の心」つづき

 たまに酒の店などへ行つてみても、実に、いやな事が多い。
お客のあさはかな虚栄と卑屈、店のおやぢの傲慢貪欲、ああもう酒はいやだ、と行く度毎に私は禁酒の決意をあらたにするのであるが、機が熟さぬとでもいふのか、いまだに断行の運びにいたらぬ。
(『太宰治全集第五巻』筑摩書房 昭和51年)
 店へはひる。
「いらつしやい」などと言はれて店の者に笑顔で迎へられたのは、あれは昔の事だ。
いまは客のはうで笑顔をつくるのである。
「こんにちは」と客のはうから店のおやぢ、女中などに、満面卑屈の笑をたたへて挨拶して、さうして、黙殺されるのが通例になつてゐるやうである。
念いりに帽子を取つてお辞儀をして、店のおやぢを「旦那」と呼んで、生命保険の勧誘にでも来たのかと思はせる紳士もあるが、これもまさしく酒を飲みに来たお客であつて、さうして、やはり黙殺されるのが通例のやうになつてゐる。
更に念いりな奴は、はひるなりすぐ、店のカウンタアの上に飾られてある植木鉢をいぢくりはじめる。
「いけないね、少し水をやつたはうがいい。」とおやぢに聞えよがしに呟いて、自分で手洗ひの水を両手で掬つて来て、シヤツシヤツと鉢にかける。
身振りばかり大変で、鉢の木にかかる水はほんの二、三滴だ。
ポケツトから鋏を取り出して、チヨンチヨンと枝を剪つて、枝ぶりをととのへる。
出入りの植木屋かと思ふとさうではない。
意外にも銀行の重役だつたりする。
店のおやぢの機嫌をとりたい為に、わざわざポケツトに鋏を忍び込ませてやつて来るのであらうが、苦心の甲斐もなく、やつぱりおやぢに黙殺されてゐる。
渋い芸も派手な芸も、あの手もこの手も、一つとして役に立たない。
一様に冷く黙殺されてゐる。
けれどもお客も、その黙殺にひるまず、なんとかして一本でも多く飲ませてもらひたいと願ふ心のあまりに、つひには、自分が店の者でも何でも無いのに、店へ誰かはひつて来ると、いちいち「いらつしやあい」と叫び、また誰か店から出て行くと、必ず「どうも、ありがたう」とわめくのである。
あきらかに、錯乱、発狂の状態である。
実にあはれなものである。
おやぢは、ひとり落ちつき、
「けふは、鯛の塩焼があるよ。」と呟く。
 すかさず一青年は卓をたたいて、
「ありがたい! 大好物。そいつあ、よかつた。」
内心は少しも、いい事はないのである。
高いだらうなあ、そいつは。
おれは今迄、鯛の塩焼なんて、たべた事がない。
けれども、いまは大いに喜んだふりをしなければならぬ。
つらいところだ、畜生め! 
「鯛の塩焼と聞いちや、たまらねえや。」
実際、たまらないのである。
 他のお客も、ここは負けてはならぬところだ。
われもわれもと、その一皿二円の鯛の塩焼を注文する。
これで、とにかく一本は飲める。
けれども、おやぢは無慈悲である。
しはがれた声をして「豚の煮込みもあるよ。」
「なに、豚の煮込み?」
老紳士は莞爾と笑つて、「待つてゐました。」と言ふ。
けれども内心は閉口してゐる。
老紳士は歯を悪くしてゐるので、豚の肉はてんで嚙めないのである。
「次は豚の煮込みと来たか。わるくないなあ。おやぢ、話せるぞ。」
などと全く見え透いた愚かなお世辞を言ひながら、負けじ劣らじと他のお客も、その一皿二円のおやしげな煮込みを注文する。
けれども、この辺で懐中心細くなり、落伍する者もある。
「ぼく、豚の煮込み、いらない。」と全く意気消沈して、六号活字ほどの小さい声で言つて、立ち上り、「いくら?」といふ。
 他のお客は、このあはれなる敗北者の退陣を目送し、ばかな優越感でぞくぞくして来るらしく、「ああ、けふは食つた。おやぢ、もつと何か、おいしいものは無いか。たのむ、もう一皿。」と血迷つた事まで口走る。
酒を飲みに来たのか、ものを食べに来たのか、わからなくなつてしまふらしい。
 なんとも酒は、魔物である。
解題 「禁酒の心
 昭和17年12月28日発行(昭和18年度新年号)の『現代文学』第六巻第1号(「特輯・傑作短篇二十人集」)に発表された。
ほかには、「鷺宮二丁目」(壺井栄)、「五月の詩」(坂口安吾)、「をんなと畑」(木山捷平)、「髭」(井上友一郎)、「山歩き」(川崎長太郎)、「事始め」(織田作之助)、「四畳」(伊藤整)などの小説が掲載されている。
 肇書房刊『佳日』に初めて収録され、戦後、日本出版株式会社刊『黄村先生言行録』に再録される。
(『太宰治全集第五巻』筑摩書房 昭和51年)
今朝の父の一枚です(^^)/
カワセミに出会って喜んでいました。
今朝は、天気がいいので倍率の高いコンデジを持参していました。
今日は、blogの更新を休憩するつもりでした(^_-)
blogは、これからも休み休み更新します。
2008年2月2日に東京の町歩きをしました。
目白坂の永泉寺にある山崎家の墓をおまいりしました。
山崎富栄さんは、ここに眠っています。
墓石を見ると「富栄」と刻まれていますが、亡くなられた日は刻まれていませんでした。
詳しいことは『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』(松本侑子 光文社)を参照してください。

翌日、禅林寺に太宰治の墓をお参りしました。
この日は、十年ぶりの大雪でした。
太宰治の墓には、雪の中にたくさんの花が供えられていました。
今日は、桜桃忌なので花と桜桃がいっぱい供えられているでしょう。