2022年5月28日土曜日

暑いけど…

 フェイジョアの花が咲き出しました。

 今朝も気温が上がり暑いけど、風が気持ちよかったです。
それにしてもまだ暑さに慣れていないのに…

関東甲信~九州 気温上昇 各地で真夏日予報 熱中症に注意を」(NHK)
 毛馬胡瓜(けまきゅうり)

毛馬と言えば与謝蕪村の生誕の地

(「春風馬堤(しゅんぷうばていのきょく) 十八首」より)

春風(はるかぜ)や堤長うして家遠し

馬堤 蕪村生誕の地、毛馬堤(けまづつみ)の中国風表記。
(『蕪村文集』藤田真一 岩波文庫 2016年)
昨日の新聞記事に

マダニ感染症、身近に迫る脅威 未知の病原体判明……」(朝日新聞 2022年5月27日)

私も2019年6月にマダニに咬まれて皮膚科で摘出手術を受けました。
長袖・長ズボンで公園を歩いているのですが、ズボンの裾から侵入されたみたいです。
もし咬まれていることに気がついたら

吸血中のマダニを無理に取り除こうとすると口器が皮膚の中に残り、
化膿することがあるので皮膚科等の医療機関で
適切な処置(マダニの除去や消毒など)を受けてください。

(「マダニ等による感染症に注意しましょう!」大阪府 2020年8月26日)
 虫と病気

 蚊や蚤(のみ)が単に人間の血を吸うだけであったら、まだまだ寛恕(かんじょ)し得ると思う。
昔勇猛な禅僧があって、蚊に食われながら修業をし、悟りを開いたという話もあるくらいであるが、これらの虫がときどき病原体を伝播(でんぱ)して人類の大惨害を及ぼすに至っては赦(ゆる)すわけにはいかんと思う。
(『日本昆虫記大町文衛 角川ソフィア文庫 昭和34年)
 蚊に刺されたあとが膿(う)むことがある。
これは普通の腫物(はれもの)が伝染したので大したことはない。
日本で、最も怖しい蚊の伝播する病気はマラリアであった。
昔はこれをおこりといって、相当流行(はや)った病気で、高熱が周期的に起って悩まされる。
近来はその原因もわかり、衛生思想も発達し、その防除にもつとめ、今ではほとんどないくらいに減っている。
マラリアの病原体を発見したのは、ロスという英国の軍医であるが、プラズモデュームという種類の原生動物で、人間を中間宿主とし、蚊を終結宿主とする不届(ふとどき)な奴である。
しかし、蚊といっても、どの蚊にでも寄生して人間に伝染するわけではなく、ハマダラカの仲間だけに寄生する。
この蚊はとまるときに尻を斜め上にあげたりするほか、いろいろの点で普通の蚊と見わけられる。
この蚊は東京その他いたるところにいるが、病原体がいなければ安心である。
 マラリアの病原体をもった蚊が人間の血を吸うとき、その胞子体(ほうしたい)が唾液といっしょに人間の体内に入って、成長増大するが、多数の小体に分れて血液の破壊作用を行う。
そのたびごとに患者は発熱するのであるが、小体が血液を犯して血球を破って出てくるまでの時間が一定しているので、その発熱が周期的に来るのである。
マラリアといっても一種ではなく、三日熱、四日熱、熱帯熱の三種があって、三日熱は一日おきに、四日熱は中二日おきに、熱帯熱は毎日発熱するのである。
 蚊が人間の患者の血を吸うと、病原体は蚊の胃の中に入り、球状の雌性配偶子(はいぐうし)と細長い雄性配偶子となり、それが合して接合体となる。
これが分裂して胞子体となり、人間に移るのを待っているのである。
発熱するときは、悪寒戦慄(おかんせんりつ)に始まり、41度の高熱にも達する。
 この病気は熱帯に多く、ことに、衛生施設の発達していないところにひどい。
昔ローマにもアフリカの捕虜と一緒に侵入し、非常な勢でローマ民族の間に伝播(でんぱ)し、ローマ滅亡の原因の一つとなったとさえいわれている。
 蚊の媒介(ばいかい)する病気は他にもまだ多く、熱帯地方では、デング熱、黄熱病、象皮病などを伝播している。
スエズ運河開鑿(かいさく)に大成功したレセップスが、なぜパナマ運河の場合に失敗したかというと、小さな蚊のためであったのである。
この蚊の伝播する黄熱病のために、工夫が続々倒れ、工事を中止せざるを得なかった。
後、この小さな虫を退治して初めて成功したのである。
わが国の最高の学者であった野口英世(のぐちひでよ)博士を失ったのも、この黄熱病にためで、この病原体がスピロヘータであるという自説を確かめるために、アフリカに渡って感染し、ついに倒れたのである。
日本ではマラリアはほとんど無くなったが、今でも日本脳炎などという病気を蚊が伝播して人を困らしている。
 蚤も悪疫を人間に伝播する点で蚊に劣らない。
それはペストである。
鼠の間にペストがはやることがあるが、病原菌は蚤が媒介するのではないかと疑われていた。
ペストにかかった鼠の血を吸った蚤の胃の中に、実際ペスト菌が存在することが確実に証明されたのは、わが緒方(おがた)博士の功績で、その後外国の学者によって実際の伝染が証明された。
このペスト菌をもった蚤が人間の血を吸うと、病菌はその口から逆流して、人間にも侵入して罹病(りびょう)させるので、ペストの流行は実は蚤によるといえるのである。
ことにケオプスネズミノミという種類がひどいそうである。
  日本では現在ほとんどなく、時折インドあたりから来ることがあるくらいである。
欧州でも今は同様であるが、昔十字軍の帰還兵がペストをもちかえり、一円に拡がって、12、3世紀から17世紀の終りにいたる長期間に、2千5百万の人間が斃(たお)れたという。
当時の人口の四分の一にあたる人間が小さな虫のためにやられたのである。
 蚊や蚤以外の吸血虫たる南京虫(なんきんむし)や、昆虫ではないが、イエダニによってもペストが伝播されることが知られており、発疹チフスが虱の一種によって人間にうつることもわかっている。
 蚤や蚊は病原体を一度体内に吸い込んでから、人間へうつしているのであるが、昆虫には蠅(はえ)やゴキブリのように吸血性でないものでも、身体に伝染病の細菌をつけて、人間の間に振りまいているものもある。
 蠅という奴は、追えば逃げるが、すぐにまたやって来る嫌な虫であるが、一匹の蠅に平均二、三十万くらいの細菌がついているそうであり、その中にはチフスを初め、赤痢、疫痢、コレラ、ペスト等の劇烈なものから、肺結核、ジフテリア、疱瘡(ほうそう)までも含んでいる伝染病の病原菌が混っていることがあるそうであるから油断がならない。
しかもこの小さな病菌という爆弾を搭載した爆撃機は、その繁殖力が非常に強く、いくらでも出てくるので仕末がわるい。
蠅の種類もきわめて多いが、屋内に入って来るのはイエバエ、ヒメイエバエ、シマバエなどで、種類はあまり多くない。
 蚤や蚊や蠅など、そろいもそろって小さな昆虫に、人間が悩まされるというのは、人間の誇りではない。
早く全滅させてしまわなくてはいけないと思う。
(『日本昆虫記』大町文衛 角川ソフィア文庫 昭和34年)